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■明るさを確保しつつ対向車や歩行者の幻惑を防ぐ
●夜間の事故低減効果が期待できる
ヘッドライトのHIDやLEDの採用によって明るさが向上する一方で、対向車にとっては眩しさによって危険な状況になる場合があります。明るさを確保しながら眩しさを避ける方法として、照射エリアや照射量を最適化する配光制御が採用されています。
さまざまな状況で夜間の適正な視界を実現する自動配光制御について、解説していきます。
●いろいろな配光制御
ヘッドライトの役割は、単に遠くまで明るく照らすだけでなく、対向車や歩行者を眩しさによって幻惑しないことが重要です。夜間の幻惑による事故を防ぐため、さまざまなヘッドライトの配光制御が開発されています。
もっとも一般的な配光制御は、ハイビームとロービームを切り替える自動ハイビーム制御です。さらに、対向車や歩行者などを眩しくさせないように配光制御するADB(Adaptive Driving Beam)、ステアリングを切った方向に照射して視界を確保する
AFS(Adaptive Front-Lighting System)、車両の上下動に応じて照射方向を水平に保つオートレベリングシステムなどがあります。
以下に、それぞれの制御内容について紹介します。
●自動ハイビーム制御
道路運送車両法の保安基準では、通常はハイビームで走行して対向車とすれ違うときや前方に先行車がいるときにはロービームに切り替えること、またロービームの照射距離は40m、ハイビームの照射距離は100mと定められています。
自動ハイビーム制御では、前方車両(先行車と対向車)をカメラなどで検知して、ハイビームとロービームを自動で切り替えます。切り替える手法としては、複数のLEDの発光箇所を切り替えるブロック制御方式と遮蔽板で切り替える遮蔽板方式があります。
●ADB(配光可変ヘッドランプ)
自動ハイビームの進化版として、ADBがあります。ハイビームで走行中に対向車や先行車の位置をカメラなどで検知すると、前方車両のエリアのみ遮光して他の領域はハイビームのままで照射します。前方車両のドライバーに眩しさを与えることなく、ハイビームで遠方の視界が確保できます。
同様のシステムとして、AHS(アダプティブハイビームシステム)、ALH(アダプティブLEDヘッドライト)、マトリクスLEDヘッドライトなどがあります。
切り替え手法としては、複数のLEDの発光箇所を切り替えるタイプと、可変シェードによって部分的に遮光する2つのタイプがあります。
●AFS(配光可変型前照灯システム)
AFSは、コーナリング走行中にステアリング操舵の方向に合わせて、光軸を移動させて進行方向前面を照射するシステムです。いち早く、死角の車両や人などの障害物を発見して、安全に回避行動を取ることができます。
具体的な手法は、ロービームの光源をステアリング舵角、車速に応じて自動で左右に動かします。また、コーナリング時には左右に内輪差があることを考慮して、左右のライトを異なる角度で動かして視認性を上げます。
●オートレベリングシステム
ヘッドライトの水平方向の照射範囲は、クルマの傾きや高さで変わってきます。
オートレベリングシステムは、車両の前後傾斜を検出してヘッドライトの上下方向の照射範囲を適正に調整します。
2006年以降に生産された車両で、HIDとLEDヘッドライトが標準装備されたすべての乗用車には、オートレベリング機能を装備することが義務付けられています。
ハイビームだと視界は確保できますが対向車を幻惑するので危ない。ロービームだと照射距離が短いため歩行者や障害物の発見が遅れて、やはり危険です。
これを解決するのが、自動で配光制御する技術で、夜間の事故低減に大きく貢献することが期待できます。
(Mr.ソラン)