【自動車用語辞典:視認性「ヘッドライトの進化」】より明るく、省電力に取り組んできた前照灯の歴史

■ハロゲン、キセノンからLED、レーザーへ

●現在はLEDの普及が進む

ヘッドライトの光源としては、ハロゲンライト(電球)からHID(キセノン)ライト、LED(発光ダイオード)ライトへと進化し、さらに最近レーザーを使った光源も実用化されました。ヘッドライトには、遠くまで明るく照射でき、一方で電力消費が少なく寿命が長いことが求められます。

それぞれの光源の特徴とメリット、デメリットについて、解説していきます。

●進化するヘッドライト

ヘッドライトの主流は、今から15年程前までは電球を使うハロゲンライトでした。現在でも安価なので、廉価なクルマを中心に多用されています。

一方で、20年ほど前から約2倍の明るさと20%以上広い照射角を持つHIDライトが出現し、明るいプレミアムなヘッドライトとして普及し始めました。

最近になって、高級車を中心にLEDライトが登場して、現在は一般車にも急速に普及しています。さらに、次世代のヘッドライトの本命とされるレーザーライトが遂に量産車に搭載されました。

以下に、それぞれの特徴について紹介します。

●ハロゲン(電球)ライト

HIDが普及する2000年頃まで、ヘッドライトと言えばハロゲンライトでした。不活性ガスとハロゲンガス(ヨウ素・臭素など)を封入した電球のフィラメントに電流を流し、発光する仕組みです。

明るさではHIDやLEDに劣り、発熱量と消費電力が多く、寿命が短いのが欠点です。一方で雨や霧の時には視認性が良く、発熱が大きいのでヘッドライト表面に凍結した雪を解かすので雪に強い特徴があります。
安価なので、数多くの廉価車でまだ採用されています。

●HID(キセノン)ライト

アーク放電を利用したライトで最大のメリットは明るいこと、ハロゲンライトに対して約2倍の明るさと20%以上の広い照射角を持ちます。消費電力が少ない、フィラメントがないので球切れの心配がない、光の色が変更しやすくカラーバリエーションが多いこともメリットです。

また寿命は、ハロゲンライトの3年に対して5年と長いです。

一方で明るい分コストは高く、点灯や放電のための制御ユニットが必要です。

最大の弱点は、点灯してから最大光量を発するまでに5~10秒かかることで、使用する場合はその遅れに対する配慮が必要です。

●LED(発光ダイオード)ライト

LEDは、電気を流すと発光する半導体の発光ダイオードです。

2007年レクサスLS600hによって世界で初めて採用され、現在は一般車での採用が進んでいます。明るさはHIDよりやや劣りますが、最大の特徴は15年という圧倒的な長寿命で、消費電力はハロゲンライトの1/3程度と少ないです。

さらに、小型化によるデザイン性の向上や配光の制御性の良さも大きなメリットです。

弱点は、発熱量が少ないので表面の雪を解かすことができないこと、価格がまだHIDよりやや高いことですが、普及の拡大とともに低コスト化が進んでいます。

LEDライトの普及率は、この2年間に10%から30%を超えるまで伸びており、今後は主流になると思われます。その理由は、省電力化による燃費の向上やEVの航続距離の延長、さらに複数の小さなLEDを組み合わせることによる配光調整の自由度の高さです。

●レーザーライト

2015年、BMWとアウディはオプション設定でレーザーライトを実用化しました。照射範囲は、LEDの300mに対して約2倍の600mと格段に広く、デザイン自由度もさらに高められます。

半導体レーザーは高価なので、普及にはまだ時間がかかりそうですが、将来に向けた次世代光源の本命と位置付けられています。

ヘッドライトのバリエーション
ヘッドライトは左から右へと進化してきた

現在LEDライトの普及率が急速に伸びています。デザイン性や配光性に優れ、省電力で燃費向上やEVの航続距離の延長が期待できるからです。

さらに運転支援技術や自動運転技術との親和性が高いことも、LEDライト普及の後押しをしています。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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