これはびっくりの高性能。新型ハスラーは自然吸気でも十分に走る【スズキ・ハスラーハイブリッドX 2WD試乗】

 ■動力性能的には十分。安全装備の省略が少々残念

東京モーターショーに展示され多くの来場者に注目されたハスラーコンセプト。その市販車であるハスラーハイブリッドに試乗しました。ターボモデルではエンジンに注目した試乗でしたが、ここでは自然吸気モデルをサンプルに実用性を含めた全体像を追っていきたいと思います。

ハスラーNA フロントスタイル
ホワイトルーフも用意される

自然吸気モデルは49馬力の3気筒660ccエンジンに2.6馬力のISG(モーター機能付き発電機)が組み合わされています。エンジン出力がターボに比べて低めの設定なのは当たり前ですが、ISGもターボよりは数値が低くなっています。とはいえ、実用上のトルク感では問題を感じません。

普段使いならば、自然吸気ユニットのトルクフィールでも十分なものです。高速道路の試乗も行いましたが、うなりを上げて走るわけでもなければ、流入時の加速不足を感じることもありませんでした。

ハスラーNA エンジン
自然吸気エンジンも十分な実力

ただ、ターボモデルにはACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)が装備されますが、自然吸気モデルには装備されません。同様にターボには車線逸脱抑制(レーンキープ)機能が装備されますが、自然吸気には車線逸脱の警告機能のみ装備となります。衝突軽減ブレーキについては自然吸気モデルにも装備されますが、ターボが全車標準装備なのに対し、自然吸気には非装着車も用意されます。

少しでも価格を抑えたクルマを設定したい、そうした装備を求めないユーザーもいる、といったところが非装着の設定理由なのでしょうが、2021年からは義務化になるのですから、こうした仕様を用意すること自体に疑問を感じます。

ハスラーNA リヤスタイル
リヤにはクォーターウインドウが追加された

試乗車はFFモデルです。走らせてみて好感度が高いのは、直進時にガッシリしたステアリングの中立感があることです。これは4WDも同じでした、直進時にはビシッとステアリングが中立し左右にぶれることがないので、安心感がかなり高いもの。軽自動車ではピカイチと言っていいでしょう。そこからステアリングを切っていったときのつながり感も自然でした。

乗り心地も良好です。突き上げ感も適度に抑えられているうえで、コーナリングの安定感も高く確保されています。4WDモデルで感じた少しの突き上げ感もうまく消されています。

ハスラー フロントシート
フロントシートはセパレート。写真はターボモデル

フロントシートはセパレートタイプですが、まだまだ登録車のようなセパレート感はなく、ベンチシートを左右に分割したようなイメージです。クッションは硬すぎず柔らかすぎずいいのですが、座面、背もたれともにサイドサポートが少なく平板なデザインであるために身体の安定感がイマイチです。

このことを指摘すると、どのメーカーでも返ってくるのが「乗降性を重視した」という言葉。今回もこの返答でしたが、乗降性と運転の確実さ、どちらが大事か考えれば自ずと答えはでるのですが、乗降性がいい方が商品性が高いのでしょう。これはメーカーの責任ではなく、ユーザーの責任です。

ハスラーターボ アームレスト
運転席にはアームレストが付く。写真はターボモデル

リヤシートは独立して前後スライドが可能で、同様に独立して前倒しできフラットにラゲッジスペースを拡大できます。さらに助手席も前倒しが可能で、長尺ものの搭載が可能。リヤシートを前倒し、フロントシートをリクライニングさせることで、2名の車中泊も可能となります。ラゲッジスペースは防汚タイプで、アウトドアグッズをガサッと入れることも可能です。

ハスラー フルラゲッジ
助手席までの前倒しが可能。写真はターボモデル
ハスラー ラゲッジ最小
リヤシートをもっとも倒した状態。写真はターボモデル
ハスラー ラゲッジ最大
リヤシートを最前部までスライドした状態。写真はターボモデル

純正ナビは9インチの大画面で見やすいものですが、操作性に若干の改善が欲しいところです。ナビモニターはオーディオや車両情報表示も兼用しています。ナビでもっとも欲しいスイッチは「現在位置」で、何かほかの操作をしているときにワンタッチで現在位置に戻ってくれないと、次に曲がるべき交差点を逃したりする可能性があります。

また、オーディオでは「交通情報」がワンタッチで欲しいスイッチです。交通情報も聞き逃すと、進路を変更し損ねたりします。操作部には「☆」のボタンがあり、ここに好きな機能を割り当てられるのですが、それではどちらかしか割り当てができません。音声機能を使うにはスマートフォンの接続が必要となり、どれも中途半端感がぬぐえません。

ハスラー ナビモニター
大型の9インチナビモニター。写真はターボモデル
ハスラー 助手席下
助手席の下には当然バケツを装備
ハスラー フラットシート
フロントシートをリヤシートを連結させた状態。写真はターボモデル

(文・諸星陽一/写真・平野学)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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