■ルノー・日産・三菱自の各社が得意な領域でリーダーシップを発揮するという体制を明確にした
いわゆる「ゴーン事件」以降、ルノー・日産・三菱アライアンスは強力なリーダーを失ったためか、ビジネス面では低迷している印象があります。実際、三菱自動車が発表した2019年度第3四半期の累計業績(4月~12月)では売上高、営業利益、経常利益、当期純利益、販売台数のすべての面において前年同期比でマイナスとなっています。当期純利益は117億6000万円の赤字となっているほどです。
同社が発表した営業利益は36億円。前年同期は850億円ですから大幅減です。その要因としてもっとも大きなものは研究開発費などによる368億円のマイナスと、為替による349億円のマイナス。一方で、アライアンス効果の期待できる資材費などのコスト面では77億円のプラス効果が出ているといいます。逆にいえば、アライアンス効果がなかったら、営業利益も赤字になっていた可能性もあるのです。
営業利益の変動要因をみていくとグローバル販売における車種構成や台数減によるものも前年同期比でマイナス187億円となっていますが、新型軽自動車「eKワゴン」が好評な日本や、三菱自が得意としているアセアン地域ではプラスとなっています(2地域の合計では129億円増)。
このように自動車メーカー(ブランド)には、その商品性や販売力から得意な地域があります。
2020年1月30日、横浜で開催されたルノー・日産・三菱アライアンスのアライアンス オペレーティング ボード(AOB)では、そうした各社の強みをフルに活かしたコラボレーションの枠組み強化が確認されました。『地域軸や商品軸、技術面などにおいて、メンバー各社の競争力に貢献する仕組みとします』と発表されています。
具体的には、地域軸においてはそれぞれのエリアで強みを持つブランドがリードすることになります。たとえば、中国は日産が、欧州はルノー、 そしてアセアンは三菱自が強みを持っている地域ですから、各社のリーダーシップが発揮されることになります。トップダウンでまとめるのではなく、各社の強みをトロイカ体制的に活用して競争力を高めようというわけです。
開発体制についても同様です。プラットフォームやパワートレインの開発においては、一社がリーダーとなり、それ以外はフォロワーという立場で開発された技術を活用するというスタンスとなることが、AOBにて確認されています。
細かい部分でいえば、ルノーのLCV(小型商用車)である「トラフィック」をベースとして三菱自がオセアニア向けに出しているLCVを設計・生産するということも発表されました。
2019年の販売実績でいえば、けっして好調とはいえないルノー・日産・三菱アライアンスですが、電動化トレンドについては幅広い領域で豊富な経験を有しているのが、この3社です。欧州でのCAFE規制(CO2排出量規制)がいっそう厳しくなる未来に向けて、2020年よりクレジット(CO2排出基準の超過達成量)を3社でプールする仕組みも作っていくということです。
純粋なEVやプラグインハイブリッドで先行した技術を持つルノー・日産・三菱アライアンスは、はたして環境性能のハードルが上がる時代において、その輝きを取り戻すことはできるのでしょうか。
(山本晋也)