■圧縮比アップとリーンバーン(希薄燃焼)によりサイクル損失の低減を図った成果が出た!
スバルが同社の技術的ロードマップや目標を発表するメディア向けのイベント「SUBARU技術ミーティング」を開催しました。その中では2020年代から2030年にかけて実現を目指すさまざまなテクノロジーが発表されましたが、もっとも直近に実現するのが新設計の「1.8Lリーンターボエンジン」です。
すでに東京モーターショーや東京オートサロンでプロトタイプが展示された新型レヴォーグ、その心臓部は新開発1.8Lボクサーターボエンジンになることは明らかにされていますが、そのエンジンについて最大熱効率40%超を達成したことが明らかになったのです。実験室レベルではガソリンエンジンの最大熱効率で50%オーバーという数字も見られますが、量産車としては40%という数字はなかなか見られないもの。国産車ではトヨタのハイブリッド用2.5Lエンジンが最大熱効率41%を達成したというのがトップですが、新型レヴォーグのエンジンはそれに並ぶ熱効率を実現したといいます。
スバルの技術的象徴でもある水平対向エンジンは、そのパフォーマンスは誰もが認めるところですが、燃費性能ではトップランナーとは言い難いという評価でした。しかし、新型レヴォーグに採用される1.8Lエンジンは最大熱効率と排気量あたりの発生トルクという指標でみると多くのライバルを置いてけぼりにするほどのハイパフォーマンスを実現したと技術ミーティングでは発表されました。量産されているターボエンジンで、ここまでの熱効率を実現したと発表しているエンジンは他にも思い浮かびません。圧倒的な性能を実現したというわけです。
エンジニアの方にうかがうと、40%というのは非常に高いハードルで、なにかひとつの飛び道具で実現できる数字ではなくフリクションの低減や燃焼の改善など細かい積み重ねが熱効率アップにつながっているということです。その中でも、技術的なトピックスがリーンバーン(希薄燃焼)です。現時点ではA/F(空燃比)の具体的な数値は未公表ですが、燃料と空気の比率(重量比)において燃料を極端に少なくするのがリーンバーン。異常燃焼などクリアすべき課題は少なくありませんが、わずかな燃料で通常の燃焼エンジンと同レベルの出力を得ることができれば燃費に有利になることは言うまでもありません。また、フリクション低減などはレスポンスなどドライブフィーリングにもプラス要素となります。新しい1.8LリーンターボエンジンはSUBARUというブランドに期待するパフォーマンスを実現しつつ、燃費性能についてもトップランナーになっていることが期待できるのです。
スバル車といえばインタークーラーを冷やすためにエンジンフードに設けられた大きなエアインテークが特徴のひとつで、新型レヴォーグにもエアインテークは健在。とはいえ、ハイパフォーマンスを得るかわりに燃費など環境性能についてはトレードオフとなっている面があるのは否めませんでした。しかし、最大熱効率40%超を実現したという新しい1.8Lリーンターボエンジンならば違います。パフォーマンスと環境性能が両立できるのです。
もちろん最大熱効率というのは全域での話ではなく、限られた領域での熱効率となります。しかし、スバルは大トルクに対応したチェーン式CVT「リニアトロニック」を熟成させています。CVTというトランスミッションはエンジンのおいしい領域をキープして使うことができるのが特徴で、その点ではステップATではかないません。新しいリーンターボエンジンにリニアトロニックが組み合わせれるかどうか未発表ですが、CVTを組み合わせることで最大熱効率近辺の領域を維持して走行することも期待できます。
もちろん電動化についてもマイルドハイブリッドからストロングハイブリッド、プラグインハイブリッドと各種の選択肢を用意する予定ですが、基本となるエンジンにおいてもまったく手抜きはなく、ライバルを凌駕する性能を実現することで、これからの時代にあった走りの愉しさと環境性能の両立が、スバルの目指す未来なのです。さらに、将来的には最大熱効率45%を目指しているという発表もありました。高い目標に向かって、まだまだボクサーエンジンは進化していくのです。
(山本晋也)