■乗用車はEV、大型トラックはFCVというのがトレンドになりそうだ
ホンダの研究開発子会社である本田技術研究所とトラック大手のいすゞ自動車が、燃料電池を使う大型トラックの共同研究契約を締結したことが発表されました。
水素を燃料にして発電することでクルマを動かす燃料電池車(FCV)は、その水素と酸素を反応させるため水しか排出しないというクリーンなパワーソースとして知られいます。バッテリー式の電気自動車(BEV)が充電に時間を要するのに比べると水素充填は短時間で済むというのも運用上のメリットで、次世代エコカーの主役といわれていた時代もありました。しかし、現時点では外部充電により電気だけで走行するBEVが乗用車においては次世代を担うエコカーとして認識されつつあります。
燃料電池車の将来は明るくない、と言われていましたが風向きが変わりつつあるようです。2019年秋に開催された東京モーターショーではトヨタ系の大手サプライヤーであるデンソーが燃料電池トラックについて言及していましたし、ドイツの大手サプライヤーであるボッシュも燃料電池に関わるパーツを展示するなど燃料電池が再評価されています。燃料電池車で先行するトヨタは、燃料電池乗用車である「MIRAI」の新型を発表しました。新型MIRAIはリヤ駆動となり、ボディも大型化するようです。また、燃料電池バス「SORA」はすでに都内などで活用されています。
排ガスを出さないゼロエミッションであることが大前提となるであろう未来において、航続距離や搭載量などが求められるカテゴリーでは燃料電池を使うというトレンドになりつつあるようです。
そうした状況での、本田技術研究所といすゞ自動車の燃料電池トラックの共同研究契約の締結です。ホンダといえばトヨタと並んで、燃料電池乗用車をいち早く市販したメーカーで、そのノウハウや知見もたっぷり持っています。いすゞの持つ大型トラック開発技術とホンダの燃料電池技術を掛け合わせることで、大型トラック向けの燃料電池システムや車両制御といった基盤技術の構築を目指すというのが、この共同研究の目的です。
燃料電池を乗用車に使うことを諦めたというわけではないでしょうが、より燃料電池の特性が活かせる大型トラックに、その採用を拡大しようというわけです。こうしたプロジェクトが市販につながれば、水素ステーションなどのインフラ整備を加速させるでしょうし、太陽光や風力といった再生可能エネルギーによる発電を水素にして溜めておくという水素社会とロジスティクスをマッチさせることにもつながります。
はたして、大型トラックは燃料電池で動くという未来はやって来るのでしょうか。
(山本晋也)