東京オートサロン2020で発表された「GRヤリス」。伝説になるために必要なものとは?【週刊クルマのミライ】

■モータースポーツでの活躍は当然として、劇中車として印象を残すことが伝説化につながる

東京オートサロン2020においてトヨタが世界初公開した「GRヤリス」。ご存知のようにWRCで勝利を重ねたヤリスのノウハウを活かし、さらに新しいWRCマシンのベースとなるべくアイデアを盛り込んだニューカマーです。

ヤリスの名前はついていますが、ボディやエンジンはベーシックカーのヤリスとは別物。エンジンは新開発1.6L直列3気筒直噴ターボ「G16E-GTS」で、トランスミッションは6速MT。さらにスポーツ4WDシステムも“GR-FOUR”と名付けられたものが新開発されています。灯火類やデザインを共通化しているだけの、中身は異なるモンスターマシンです。

そんなGRヤリスの国内販売は2020年夏の予定。さらにローンチ記念モデルといえる「ファーストエディション」の予約受注が始まっています。396万円~という価格は中身を考えるとバーゲンプライスといえるもので、デビュー前から評価はうなぎのぼりとなっています。もはや伝説的マシンになることは約束されたという印象です。

WRC OLD and NOW
新旧のトヨタWRCマシン。奥のセリカはサファリラリー仕様

しかし、本当に伝説的マシンになるためにはハードウェアの出来やラリーフィールドでの活躍だけでは足りません。トヨタのスポーツ4WDマシンとして生まれたセリカGT-FOURは型式でいうとST165、ST185、ST205と三世代を数えますが、印象深いのは初代ST165でしょう。WRCでの活躍でいえばST185のほうが上回っているはずですが、初代にはモータースポーツ以外に印象的なエピソードがあります。

それは映画「私をスキーに連れてって」の劇中車として使われたこと。チューニングを施されたセリカGT-FOURが街中を駆け抜け、ゲレンデを疾走したシーンを覚えているファンも多いことでしょう(まあ、最後は横転してしまうわけですが……)。

こうしたサイドストーリー的なエピソードというのはクルマの伝説化に一役買います。トヨタでいえば2000GTにしても”ボンドカー”として銀幕に登場したことが、いまだに語り継がれています。他メーカーでも「ルパン三世のチンクエチェント」「西部警察のスカイライン」など劇中車としての印象深いクルマはいつまでも人気を保つ傾向にあります。

GRヤリスがモータースポーツで活躍し、またチューニングベースとしても愛されることが必要条件なのは言うまでもありませんが、ドラマや映画、アニメでもGRのスポーツカルチャーをアピールすることができれば伝説化すること間違いなしといえそうです。そうなってこそセリカGT-FOURの後継としてふさわしいモデルになるのではないでしょうか。

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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