グロムは峠の小さな戦闘機だった! ビギナーからベテランまで、広く深く走りが楽しめる【ホンダ・グロム(実走編)】

■小さくてもパワフルなエンジン&本格的なブレーキ

グロム
グロムは急坂の峠もリッチなトルクで軽々と走ります。

グロムで走り出してまず驚くのは、小さなエンジンが生み出すトルクの豊かさ。3000回転からぐいぐいと盛り上がるトルクは、8000回転を超えるまで粘り強く続きます。小排気量車だからといってぶんぶん回す必要はありません。ワイドなパワーバンドのおかげで、シフト操作すらほとんど意識せずに走れます。そのため、スペック的には控えめな4速ミッションにもまったく不満は感じませんでした。

グロム
80度前傾した4ストロークSOHC124cc単気筒エンジン。精悍なブラック塗装もかっこいいですね。

ローギアの加速はとくに強烈です。不用意にスロットルを開けると軽く首がのけぞるほどなので、ラフなアクセルワークは禁物。無理に回さず早めのシフトアップを心がけ、高めのギアを選んでおいしい中速域をほどよく使う走り方がおすすめです。

それでもローギアは「ちょっと高めかな?」とも感じました。いったん走り出してしまえば、全域で鋭いピックアップと加速感が楽しめる反面、停止状態からの発進加速だけはふわっとソフト。よほど頑張らないとフロントアップもできないくらいなので、発進加速にガツンとインパクトがほしいライダーは、少し物足りなさを感じるかもしれません。でもそのぶん、意図せずフロントアップしてしまうアクシデントのリスクが低く、クラッチ操作に不慣れなビギナーでも安心して走れます。

■よくきくブレーキとゆとりの足まわり

グロム
グロムのフロントブレーキ。赤いブレーキキャリパーはデザイン上のアクセントにもなっています。

グロムのブレーキは強い制動力をもち、しかもコントローラブル。路面に吸い付くようなグリップ力を持つタイヤと相まって十分なストッピングパワーを発揮します。フロントだけでフルブレーキングを試みると、ふわっとリアが浮きはじめるほど。いっぽうリアブレーキは、よく効くぶんロックしやすいので、セオリーどおりナメるようにじわっと優しく使うのがよさそうですね。サスペンションは、ストロークこそ短いもののキャパシティにゆとりがあり、上質でしっとりと落ち着いた乗り心地を実現しています。

グロム
フロントサスペンションは倒立フォークを採用。固めですが乗り心地も悪くありません。

■峠で光る軽やかなコーナリング

グロム
確実な荷重コントロールが、狙ったラインにグロムを乗せるコツ。

1200mmの短いホイールベースと104kgの軽量ボディが生み出すコーナリングは軽快そのもの。ひらひらとラインを変えながら変幻自在のアプローチでコーナーをクリアしてゆくライディングは、グロムの醍醐味ともいえます。俊敏な運動性と安定性が高次元でみごとにバランスした走りです。

ただ、やはり小径ホイール/ショートホイールベースゆえのフロントタイヤの過敏さは消しきれていません。ペースをあげてコーナーに進入すると、フロントがききすぎてラインが乱れる場合も。でもフロントに頼りすぎず、リアタイヤに乗るつもりでコーナリングすれば、不安定さが顔を出すことはありません。それでもバンプなどの路面変化は苦手なので、大きなギャップを拾わないよう賢くラインを選びましょう。

■ピッチングモーションを手なずけるのが楽しむコツ

グロム
入門用にピッタリの手軽なグロムですが、その走りには奥深さが感じられます。

キビキビしたグロムの走りは、力強いエンジンとよく効くブレーキというふたつのパワーに支えられていますが、小さなバイクでは、それが過度のピッチングモーションを引き起こしやすいのも事実です。でも、ていねいなスロットルワークとブレーキングでピッチングをうまくいなし、前後タイヤの荷重配分を制御できれば、グロムの性能を100パーセント引き出し、思うぞんぶん軽快な走りを楽しめます。グロムで峠を走り込めば、ビギナーはライディングの基本をしっかり学べ、ベテランは繊細な操縦性の面白さをたっぷり味わえそうですね。

グロムは、走りのスピリットに満ちた峠の小さな戦闘機。腕をみがきに、週末は近所の山へ、ちょっとフライトにでかけてみませんか?

グロム
チョイ乗りからツーリング、スポーツ走行まで、グロムならなんでも気軽に楽しめます。

【ホンダグロム主要諸元】

全長×全幅×全高:1755mm×730mm×1000mm
シート高:760mm
エンジン種類:空冷4ストロークOHC単気筒
総排気量:124cc
最高出力/最大トルク:7.2kW/1.1kgf
燃料タンク容量:5.7ℓ
タイヤ(前・後):120/70-12・130/70-12
ブレーキ:油圧式ディスク
車両価格:35万7500円

(写真:高橋克也 文:村上菜つみ)

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小さくても大満足!! 見ても、乗っても、触っても楽しいグロムに乗ってみた【ホンダ・グロム(概要編)】
https://clicccar.com/2019/12/13/936133/

【関連リンク】
村上菜つみさんがホンダ・グロムで出かけたツーリング記事は、月刊誌「モトチャンプ」2020年1月号に掲載されています。

モトチャンプ2020年1月号表紙
モトチャンプは毎月6日発売です。

https://www.sun-a.com/magazine/detail.php?pid=11176

GROM Official Site
https://www.honda.co.jp/GROM/

この記事の著者

村上菜つみ 近影

村上菜つみ

福岡出身・東京在住のモデル&モータージャーナリスト。ツーリング雑誌での編集経験を経て独立し、二輪・四輪問わず幅広い分野で執筆中。「月刊モトチャンプ」連載中の「ぶらり二輪散歩」で使用したバイクのインプレッションを毎月6日(モトチャンプ発売日)に公開する他、乗り物関連の展示を紹介する「村上菜つみのミュージアム探訪」をシリーズ連載しています。
愛車はホンダ・モビリオスパイク&ホンダ・VTRです。
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