■新型「RAV4」には悪条件での走破性を引き出すマルチテレインセレクトが備わる
クロスオーバーSUVと呼ばれる、乗用車のプラットフォームをベースとしたSUVが主流となっているのが明確になったのが「令和元年」なのかもしれません。2019-2020日本カー・オブ・ザ・イヤーをトヨタ・RAV4が受賞したことはその象徴的な出来事といるのではないでしょうか。
初代RAV4が生まれた頃ですから、かなりの昔話になりますが、クロスオーバーSUVのような乗用車をベースとしたSUVは「なんちゃって四駆」と呼ばれていたこともありました。大きめのタイヤで四駆ぽい雰囲気は漂わせているものの走破性はそれほどでもないという意味で、クロカン4WDのファンがちょっとバカにするときに使っていたことが多かったように記憶しています。
しかし、いまどきのクロスオーバーSUVは悪路走破性についても、それなりの性能を持っていないといけない時代になっていると感じます。RAV4についていえば『マルチテレインセレクト』という電子制御を使った悪路の走行支援システムが搭載されています。
選べるモードは「マッド&サンド」、「ロック&ダート」、そしてノーマル。マッド(泥)&サンド(砂)はタイヤが空転してしまうようなシチュエーションでのアシストをするもの。ロック(岩)&ダート(土)はタイヤが浮いてしまうような状況でもしっかりと前に進むように制御するものです。
走破性にはギア比やタイヤの性能も関わってきますので、こうした電子制御だけで本格的なクロカン4WDと同等の性能を実現したというのは難しいかもしれません。
ですが、クロスオーバーSUVであってもタイヤが対角線で浮いてしまったとしても走破できるだけの性能が求められる時代になっていると感じます。それはRAV4だけでなく、令和になってマイナーチェンジした2台の国産クロスオーバーSUVも悪路走破性を強化しているから。
10月に商品改良を行なったSUBARU XVは、2.0L車をすべて「e-BOXER」と呼んでいるマイルドハイブリッドのパワートレインにしていますが、あわせて「X-MODE」という走破性を高める電子制御テクノロジーを従来のシングルモードから「スノー・ダート」と「ディープスノー・マッド」の2モードへと進化させています。2モードのX-MODEは、すでに同社のフォレスターに採用されていますが、XVにも横展開したというわけです。
実際、フォレスターの経験でいえばX-MODEを活用すると厳しいコンディションでの走破性が明らかに高まります。難しいテクニックを意識することなく、クルマに任せておけば、かなり厳しいシチュエーションでも走り抜けることができるのです。
もう一台、悪路走破性を高めたクロスオーバーSUVはマツダ・CX-5です。こちらは12月のマイナーチェンジにおいて、新開発した「オフロード・トラクション・アシスト」という電子制御技術をAWD車に採用しています。このシステムは、トラクションコントロールシステムとAWD制御を協調させることで悪路の走破性を高めるというもの。メーカーリリースによれば、想定外のスタックからのスムースな脱出をサポートするということですから、かなりの自信作といえそうです。
いまどきのSUVは、かつてのように「なんちゃって」と揶揄されるような性能ではありません。とはいえ、多くのユーザーがメインとしているのは舗装路で、オフロード性能はオマケ的なイメージもあるでしょう。だからといってSUV的なスタイルをしていればいいという時代でもありません。
これだけクロスオーバーSUVが増えてきたからこそ、SUVスタイルから想像される悪路走破性も満たしていないと商品として差別化しづらい時代になっているといえます。オフロード性能における走破性の期待値を高めておき、その機能を一目でアピールすることが令和のSUVには求められる要素にとなってくることでしょう。
(山本晋也)