10月27日に鈴鹿サーキットで開催の「2019年 全日本スーパーフォーミュラ選手権 最終戦 第18回JAF鈴鹿グランプリ」で、VANTELIN TEAM TOM’Sのニック・キャシディ選手が2位入賞で2019シーズンのチャンピオンとなりました。
予選6番手からのスタートながらスタートにソフトタイヤを選択してレースをリードする作戦で上位を目指します。
チャンピオン争いをする山本尚貴選手とはわずか1ポイント差。山本選手の前でチェッカーを受け表彰台に乗ることができればチャンピオン決定となります。
そして34周目にピットイン。タイヤ交換を伴うピット作業をわずか11秒というタイムで完了しコースに復帰。
チャンピオンに向けてのチェッカーフラッグを目指します。
ファイナルラップに向かって行くと、ピットの中も様々なゲストやスタッフが集まってきます。
ファイナルラップになると、なんとくま吉までピットを訪れ、レースクイーンとともにファイナルラップを見守ります。
そしてチェッカーフラッグが振られます。まず最初にくぐり抜けたのは優勝の野尻智紀選手。
ニック選手がチェッカーをくぐり抜けると小枝正樹エンジニアは大歓喜、と予想していましたが実際はほっと胸をなでおろす安堵の表情。むしろやりきったという感触が大きかったようです。
中嶋一貴選手を担当していた舘信秀監督は中嶋選手がチェッカーを受けるまで立ち上がることはなく「レース」を続けます。そして中島選手がウィニングラップに突入しS字コーナーへとさしあたるあたりでやっと笑顔を見せます。
「いやぁ、やっときたよ」と、舘監督もまた安堵の表情。ニック選手のチャンピオンに向かってのチームのプレッシャーがいかに強いかわかる瞬間です。
チーム全体が安堵から歓喜に変わるには少し時間が必要でしたが、本当に徐々に歓喜が大歓喜へと変わっていきます。
なぜならパルクフェルメがピットの正面だったから。ニック選手の大歓喜を見ていたスタッフやレースクイーンなどはその姿を見て号泣する方も現れます。
大歓喜を上げるニック選手に駆け寄ってきたのは中嶋一貴選手。ガッチリと握手をしてチャンピオン決定を祝福します。
最後までチャンピオンを競った山本尚貴選手もニック戦と健闘を称え合います。
そして舘監督も祝福に。眼鏡の奥に薄っすらと涙が見えるような気がします。
ランキング2番手から臨んだ最終戦でニック選手をなんとかチャンピオンにしたいと一丸となったチーム。そのプレッシャーはかなりのものだったのでしょう。チェッカーの瞬間に漂った安堵の空気はチャンピオンを生み出したチームならではの空気だったのかもしれません。
(写真:松永和浩、高橋英彰 文:松永和浩)