目次
■交流発電機と整流器で構成される
●簡易ハイブリッドへの発展も
エンジンで回転するオルターネーター(発電機)は、エンジンの点火システムや噴射システム、車体のライト、オーディオなどに電力を供給し、同時に余剰の電力でバッテリーを充電します。
電力を供給するための発電と、バッテリーの充電という2つの機能を持つオルタネーターの構造や機能について、解説していきます。
●オルタネーターの役割とは
オルタネーターは、走行中に動作している電装部品への電力供給とともに、エンジン始動などで消費したバッテリーの電力の補給(充電)する2つの役割を担っています。
オルタネーターは、エンジンで駆動しているのでエンジンが回っている時しか発電できません。エンジン始動時には電力を供給できないので、スターターの起動は直接バッテリーからの電力で行います。
通常の走行では、オルタネーターによって発電する電力は、クルマの走行に必要な電力を上回ります。余剰の電力はバッテリーに充電するので、バッテリーがあがることはありません。
●オルタネーターの構造
オルタネーターの機能は、交流発電機と整流器に分けられます。
交流発電機は、ローターとステーターから構成され、ローターはベルトを介してクランクシャフトで駆動されます。ローターの中央にローターコイルが巻かれ、その外側にローターコア(磁極)が組み込まれています。一方ステーターは、ステーターコアとステーターコイルで構成されています。
ステーターの内側にある励磁されたローターが回転することで、ローターコアから出た磁束がステーターコイルと交差し、電磁誘導によって電流が発生します。
整流器は、三相全波整流回路とICレギュレーターで構成されています。発電機の出力は三相交流なので、ダイオードで構成された整流回路で直流にします。また、エンジン回転ともに電圧は上昇するので、ICレギュレーターで常時12~14Vに制御します。
●オルタネーターの多機能化と進化
電動化の大きな流れの中で、オルタネーターは単に発電するだけでなく、大きく進化しています。
発電機は、可逆の電気機械変換器なのでモーターとしても使えます。例えば、ISG(Integrated Starter Generator)は、発電機能だけでなく、始動のためのモーター機能も持つ発電機能付きスターターです。ホンダのIMAシステムやスズキのS-エネチャージシステムで採用されています。
さらに、現在欧州を中心に採用が進んでいるマイルドHEV用として、オルタネーターを高出力化した発電機/モーターが活用されています。マイルドHEVは、減速時に発電機で減速エネルギーを電力として回収(減速回生)して、その電力で低中速域をモーター走行する簡易的なHEVシステムです。
標準的な12V電源のマイルドHEVもありますが、最近はより大きな燃費効果を狙った48VマイルドHEVシステムが本命となっています。
●減速回生
減速回生は、減速時に発電機の回転抵抗を制動力として使い、回転エネルギーを電気エネルギーに変換して回収します。
標準的なガソリンエンジンでも、オルタネーターを使った回生ブレーキ制御を行っています。ただし、一般的なオルタネーターの出力は小さいので、大出力のモーター/発電機を搭載している電動車に比べると、燃費の低減効果は期待できません。
オルタネーターは、燃費に大きな影響を与えるため、低回転でも十分な発電効率を確保する、必要なときだけ発電して駆動ロスを抑える、減速時にできるだけエネルギー回生するなど進化し続けています。
さらに、最近は発電だけでなく、マイルドHEV用に出力を上げて動力源として活用する方向に進んでいます。
(Mr.ソラン)