●新採用のブレードスキャンAHSは、ハイビームアシストのなかでも高い性能を誇る
レクサス・RXは1998年に導入されたモデルで、その歴史はすでに20年を超えました。当時すでにSUVの波は起きていましたが、そのなかにプレミアムという流れはありませんでした。RXはいち早くSUVのなかにプレミアムという要素を取り込んだモデルで、今の世界潮流を作り出したモデルとも言えます。
今回のマイナーチェンジではインテリアやエクステリアの変更とともに、各種のグレードアップが行われています。なかでも特筆なのが新たに採用されたブレードスキャンAHSというハイビームアシストです。
クルマのヘッドランプはロービームが標準と考えているドライバーが多いようですが、じつは基本はハイビームで、ハイビームは「走行灯」といわれます。ロービームは「すれ違い灯」と言われていて、対向車とすれ違うときや先行車がまぶしいときに使うものです。
しかしながら、現在の日本での状況を考えるとハイビームで走れるシーンはわずかと言えます。しかし、ロービームでは判別できないものがあるものまた事実です。
各社からハイビームコントロール装置が発表され、実用化されていますが、レクサスRXに採用したブレードスキャンAHSは、既存のハイビームアシストのなかでも高い性能を誇るものです。
詳しい機構は省略しますが、ブレードスキャンAHSは縦方向に分割された光を照射することによって、対向車や先行車にまぶしい思いをさせることなく、照射範囲を広げることで安全性を高めています。
試乗時は夜ではありませんでしたが、トンネルを走行する機会に恵まれました。トンネル内では、先行車を避けて見事に配光する様子が確認できました。また対向車がいなくなると、右側はかなり先まで照らしてくれます。地方の道路照明のない道などではしっかりと照射してくれるでしょうから、安心感はかなり高まります。この走行時には同業者が前を走っていたので、試乗後に「まぶしさを感じたか?」を訪ねたところ、まったく感じないとのことで、安心して使えることも確認できました。
今回のマイナーチェンジではボディのスポット溶接打点を増加、構造用接着剤の面積拡大などが行われボディ剛性をアップ。さらにサスペション剛性の向上などをしたうえで、ショックアブソーバーを改良しています。
乗った感覚ではまとまりのいい走りを得ている印象です。現行RXはもともと正確な走りができるモデルでしたが、今回の改良でより正確さが増した印象です。とくに、障害物を避けるような急激な車線変更では、ステアリング操作に対するクルマの動きが正確で、車線変更後の動きの収束もピシッとしていて気持ちのいいものです。
今回のマイナーチェンジでは3列シートモデルの3列目シートを95mm後退させることができるようになりました。シートが後退できるようになったことで、従来はかなりキツかったサードシートのスペースがかなり余裕が出てきたことになります。プレミアムな部分も向上しつつ、しっかりと実用性をアップしてくるところは、さすがトヨタのクルマ作りを感じることができます。
(文/写真・諸星陽一)