●熟成が進んだTNGAが上質でクラスを超える走りを実現
1966年に初代が登場したトヨタのベーシックセダン、カローラ。半世紀を超える歴史を持つカローラは世界各国150カ国以上で製造され、累計で4700万台を超える生産台数を誇る大ヒットモデルです。
今回フルモデルチェンジし12代目となりましたが、このフルモデルチェンジにあたり日本仕様はかつてなかった大きな変更を受けました。
それは5ナンバーサイズからの脱却です。11代目まで日本仕様のカローラは全幅を1700mm未満とした5ナンバーサイズを維持してきましたが、この12代目では全幅を1745mmに拡大しました。ただ大きくしたわけではなく、ドアミラー格納時の幅やドアの開き方、最小回転半径の縮小などボディを大きくしつつも、使い勝手を悪くしない工夫が施されました。
新型カローラに用意されたパワーユニットは1.8リットルガソリン+モーターのハイブリッド、1.8リットルピュアガソリン、1.2リットルピュアガソリンターボの3種です。ハイブリッドにはリヤにモーターを追加した4WD仕様も設定されます。
試乗車はFFのハイブリッド、グレードは最上級となるW×Bで、車両本体価格は275万円、特別色、合成皮革+レザテックのシート、Tコネクトナビキット(ディーラーオプション)などのオプションを含む総額は320万円強となります。
クルマに乗り込むと先代カローラよりもずいぶんと若々しく、そして高級感があふれたインパネが目に入ります。ステアリングホイールの感触、ソフトパッドがあしらわれたインパネの感触、ATセレクトノブの触感……いずれも上級感にあふれ、「これ、カローラだっけ?」という印象です。システムを起動し、クルマを動かし始めるとその印象はさらに高まります。
フロアに用意されたATセレクターは迷うことなくDレンジを選ぶことができます。パーキングブレーキは電動で、Pレンジからレバーを動かすと自動で解除されます。この際、フットブレーキは踏んでいることになりますので、クルマが動き出すことはありません。Dレンジでアクセルを踏み込み加速を開始しますが、そこにはもう従来のカローラのような雰囲気はなく、グッと上にシフトした感覚を受けます。
エンジンの排気量が1.5リットルから1.8リットルにアップし、余裕が増したこともありますが、すべてにおいて上級にシフト。プレミオ&アリオンを飛び越え、カムリレベルにまでジャンプしたような感じを受けます。
試乗会が開催されたのは横浜のみなとみらい地区でした。市街地+都市高速での試乗というシチュエーションでは、さまざまな路面で高フィールを味わわせてくれました。低速での大きな段差乗り越えはもちろん、高速道路の路面の継ぎ目なども上手にこなしていきます。
新型カローラはTNGAと呼ばれる新しいプラットフォームを採用。リヤサスペンションが従来のトーションビームからダブルウィッシュボーンに変更、さらにショックアブソーバーも新設計のものに変更されています。
コーナリングは車体がロールしつつもタイヤがしっかりと路面をつかんでいくタイプです。ロールはありますが、安定感はすこぶる高いものです。乗り心地にしても、コーナリングにしても、加減速にしても、雑味のないフィーリングです。この雑味のないフィーリングがカムリっぽさを感じさせてくれるのかもしれません。TNGAは2015年のプリウスから採用が始まりましたが、このカローラへの採用で熟成を果たした感じを受けることができました。
(文/写真・諸星陽一)