目次
排気音が変わり、クルマの後姿を引き締めてくれるマフラー交換は、チューニングの定番となっていますが、交換したことにより車検に通らないなんてことになると、せっかくの交換も無駄になってしまいます。そこで、車検に通る改造・通らない改造の見分け方を、元自動車ディーラー営業マンが、解説していきます。
■マフラーが適合外となる要因
マフラーに対する車検時の検査項目は大きく分けると3つになります。ひとつは近接排気の音量、次に最低地上高とボディはみだしなどの形状の問題、最後に劣化や破損についてです。ひとつでも適合から外れてしまうと車検に合格することはできません。それぞれの項目について、注意点を見ていきましょう。
●音量は車検適合品と書かれていても安心できない
マフラーには「車検適合」「保安基準適合」といった文言が並んでいるものが多く、ユーザーからすると、これが付いていればどのマフラーに変えても大丈夫…と誤解をしてしまいます。これらの文言は、すべてを信じていいわけではありません。実際に自分のクルマに装着して、音を出し、音量測定をしてみないと、本当に車検に適合するのかどうかはわからないのです。
音量の基準は2010年4月以降生産のクルマで、96デシベルとなっており、それ以前に作られたクルマでも最大103デシベルまでと決められており、車種によって規制値は変わります。
JASMA(日本自動車マフラー協会)の認定品であれば、最大音量の96デシベルに対して、ギリギリのラインで製造することはないので、ほとんどの場合適合しますが、JASMAの認定品でないものは、保安基準適合と書かれていても、実際に適合しないケースが多くあります。
また音量に関しては、法律改正で2016年10月1日以降に生産されたクルマは、新車検査時のマフラー音量よりも大きな音のするマフラーには交換ができなくなっているので、注意が必要です。
●ローダウン車は最低地上高に注意
マフラー自体に問題がなくとも、取り付けた後にクルマ自体との適合が合わず、車検適合外となるケースも多くあります。そのひとつが最低地上高の問題です。
保安基準により、クルマの最低地上高は9cm以上の確保が必要です。排気管やサイレンサーが純正品よりも大きくなる傾向の社外マフラーは、到着することにより最低地上高が確保できなくなる可能性があります。最低地上高の計測は、クルマの外周部に限らず内側の部分も全て含めたボディやシャシーに付属する部品の中で、最も低い位置にある物と地面との間で測られるものです。特に純正マフラー状態で、最低地上高ギリギリまでローダウンをしているクルマでは、この問題に大きく抵触する可能性が高いです。
また、元々のクルマの長さを3cm超えてしまう長さのマフラーは取り付けることができなかったり、マフラーの出口が尖っているものも保安基準適合外となります。音だけでなく、形状にも注意しなければならないのが、マフラー交換です。
●破損や腐食にも注意が必要
社外マフラーへの交換には様々な条件がつきますが、純正マフラーの場合、二つ返事で車検に通るのかというと、必ずOKとは言い切れないのです。
マフラーは、エンジン、サスペンションなどと並び、クルマの中の非常に重要な部品のひとつで、汚破損について厳しくチェックされます。排気ガスを浄化する役割を担うマフラーの破損により、本来は外に出てこない有害なガスが放出される危険性があるため、小さなヒビ割れから、ガス漏れまで、かなり厳しいチェックが行われます。
穴の開いたマフラーをパテ埋めして修理するということもありますが、完全にガス漏れのない修復が行われないと、車検を通すことは難しくなります。
音量ダウンをさせるために、サイレンサーなどを取り付ける場合も、ネジ止めのような簡単に取り外しができる状態では、破損部位と同じ扱いになってしまい適合しません。マフラーへの取り付けは、リベットや溶接などの簡単に取り外しができない方法で取り付けなければなりません。
●まとめ
マフラー交換の注意点や、車検を受ける際に指摘されることの多い事柄について解説してきました。騒音に対する規制が多く行われ、マフラーを取り巻く環境がどんどん変化しています。自分のクルマが、どの法規制に当てはまるのかしっかりと確認して、マフラーチューニングを楽しむ必要があるでしょう。
(文:佐々木 亘)