2019WEC富士6時間レースを制したTOYOTA GAZOO Racing。実は富士では圧倒的強さを誇っていた。

●見事に1、2フィニッシュを決めたTOYOTA GAZOO Racing

10月6日、富士スピードウェイで行われた2019-2020年WEC世界耐久選手権第2戦富士の決勝レース。

WEC富士6時間レースのスタート
WEC富士6時間レースのスタート

TOYOTA GAZOO Racingの8号車トヨタTS050ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ、中嶋一貴、ブレンドン・ハートレー組)が総合優勝を飾リました。2位は7号車トヨタTS050ハイブリッドとなり、トヨタが母国の日本ラウンドでワン・ツー・フィニッシュを達成したのです。

1、2フィニッシュを達成したTOYOTA GAZOO Racing
1、2フィニッシュを達成したTOYOTA GAZOO Racing

今回のWEC富士6時間レースは7号車にとって盤石とは言えないレースでした。台風の予報があったものの台風自体は進路がそれたことでレースは開催となりましたが、レインタイヤに履き替えるか否かという微妙な量の雨が降ったり止んだりという天候。

小雨の中のトヨタTS050ハイブリッド
小雨の中のトヨタTS050ハイブリッド 8号車

また、スタート早々にGTE-AMクラスのマシンにアクシデントがあったためセイフティーカーが導入されるなど、WEC富士6時間レースは荒れた序盤でスタートしています。

決勝レース終盤を走る小雨の中のトヨタTS050ハイブリッド 8号車
決勝レース終盤を走る小雨の中のトヨタTS050ハイブリッド 8号車

またレースが終盤に差し掛かりトップを独走していたトヨタTS050ハイブリッドの8号車に、突如ドライブスルーペナルティーが課せられます。原因はピットロードでの速度違反。

8号車を追いかける7号車
8号車を追いかける7号車

このドライブスルーペナルティーにより2位の7号車との50秒近かったアドヴァンテージが半減。

トップを走る8号車
トップを走る8号車

しかし8号車のラップタイムは衰えることを知らずそこから7秒以上も差を広げ30秒以上の大差をつけてトップでチェッカーを受け優勝を果たしました。開幕戦のシルバーストーンを優勝した7号車と今回の富士で優勝した8号車のドライバーズポイントはともに44点で、シリーズ全体もこの2台が軸となって展開していくのではないかと予想されます。

●グリッドセレモニーでみたTOYOTA GAZOO Racingの恐るべき強さ

WEC富士6時間レースではスターティンググリッド上で世界選手権にふさわしいオープニングセレモニーが開催されます。

グリッドセレモニー
グリッドセレモニー

グリッドで行われるセレモニーは大会に関わる団体などの旗の入場から始まります。WECやルマンシリーズを統括するオーガナイザーA.C.O、国際自動車連盟FIA、世界耐久選手権WEC、そして日本の国旗が入場します。この旗を持つメンバーも厳選された人選をもとに決定されています。

高橋翼選手
高橋翼選手

ACO旗を担当するのは今年のSUPER GT 富士500マイルレースで優勝をした高橋翼選手。

林紗久羅さん
林紗久羅さん

FIA旗を担当するのは2018日本レースクイーン大賞グランプリの林紗久羅さん。

太田麻美さん
太田麻美さん

WEC旗を担当するのは2018日本レースクイーン大賞プレイボーイ賞の太田麻美さん。

篠原拓朗選手
篠原拓朗選手

そして日本国旗「日の丸」を担当するのはTCRJシリーズ最終戦岡山で2レース完全優勝を果たした篠原拓朗選手。

グリッドセレモニー
グリッドセレモニー

これらの旗の入場とともにグリッド上にレーシングカーが並んで行くのです。

吉川 壽一さんによる書のパフォーマンス
吉川 壽一さんによる書のパフォーマンス

世界的に著名な書道家、吉川 壽一さんによるWEC富士をイメージした書のパフォーマンスも行われます。

富岳太鼓_Total Drums' Drum Performance by FUGAKU-DAIKO
富岳太鼓_Total Drums’ Drum Performance by FUGAKU-DAIKO

そしてセレモニーの要所要所を迫力ある音で演出する富岳大鼓の演奏。富岳太鼓は御殿場市を拠点に打楽器のみで演奏を行う創作音楽の集団で、もはや御殿場周辺の伝統芸能と言っても過言ではない存在です。

優勝トロフィーの返還
優勝トロフィーの返還

これらのセレモニーの中でも特に重要なコンテンツが優勝トロフィーの返還です。昨年の優勝チームであるTOYOTA GAZOO Racingの7号車から富士スピードウェイに返還されるというものです。

小林可夢偉選手
小林可夢偉選手

この返還に際して昨年の優勝チームである7号車をドライブした小林可夢偉選手は「今年もこのトロフィーを持って帰りたいですね」と語ります。

WEC富士6時間レース総合優勝トロフィー
WEC富士6時間レース総合優勝トロフィー

このWEC富士6時間レース総合優勝トロフィーには初開催となった2012年から歴代の総合優勝チームの名前が刻まれます。改めてそのチームの羅列を見てみると驚くべき事実が浮かび上がってきました。

WEC富士6時間レース総合優勝トロフィー
WEC富士6時間レース総合優勝トロフィー

2012年から2014年までトヨタが優勝。2015年はポルシェが優勝しています。

WEC富士6時間レース総合優勝トロフィー
WEC富士6時間レース総合優勝トロフィー

2016年から3年連続でTOYOTA GAZOO Racingが優勝。そして今年もそのTOYOTA GAZOO Racingの名前が刻まれます。また2016年からは7号車と8号車が交互に優勝。昨年は7号車の優勝からの今年の8号車の優勝にはなにか法則めいたものを感じてしまいます。

TOYOTA GAZOO Racing トヨタTS050ハイブリッド 8号車
TOYOTA GAZOO Racing トヨタTS050ハイブリッド 8号車

WEC富士6時間レースの8回の開催で7回の優勝を誇るトヨタ。何が何でもホームコースでの勝利は譲らないという姿勢が強さに結びついているのでしょうか。昨年、今年とWECスーパーシーズンで2度のル・マン優勝を果たしたTOYOTA GAZOO Racing トヨタTS050ハイブリッド。2019-2020シーズンの最終戦となる来年のルマンも期待できそうではないでしょうか。

(写真・文:松永和浩)

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
続きを見る
閉じる