■衝突被害軽減ブレーキの守備範囲拡大がマイナーチェンジのメインテーマ
言わずと知れた「日本で最も売れているクルマ」であるホンダ・N-BOX。2019年度の上半期(4月~9月)の販売台数は13万6047台で、またまた登録車を含むすべての新車販売でのナンバーワンとなっています。そもそもN-BOXの月販目標は1万5000台ですから、目標の1.5倍近いペースで売れ続けているというわけです。
現行型にフルモデルチェンジしたのは2017年9月。デビューから2年を経ても、この勢いを維持しているのはまさに驚異的です。
そんなN-BOXが10月4日にマイナーチェンジを受けました。好評のエクステリアには手を入れず、内装でも「運転席&助手席ヒーター」と「左右独立式リアセンターアームレスト」をほとんどのグレードに標準装備した程度。マイナーチェンジとしては非常に地味な内容に見えます。
しかし、今回のマイナーチェンジにおけるメインテーマはADAS(先進運転支援システム)の進化にあります。「Honda SENSING(ホンダ センシング)」の衝突軽減ブレーキ(CMBS)の性能を大きくアップデートしているのです。
具体的には前方を横断する自転車や夜間の歩行者といった従来のシステムでは検知しきれなかった対象を認識できるようになっていますす。つまり、事故回避の支援能力を高めたということになります。また、リアワイドカメラの画素数を従来の30万画素から100万画素まで向上させ、解像度を上げているのも進化ポイントです。
かつてマイナーチェンジといえば、走りの性能や利便性を向上させることが商品力につながると考えられていました。しかし、いまのユーザーニーズは違います。先進安全性能を向上させることが商品力につながる時代です。
理想をいえばスマートフォンのアプリのようにほぼ自動的にアップデートしてほしいところ(自動車用語ではOver the Airを略してOTAと呼んでいます)ですが、こと安全にかかわる機能ですからそうはいかない部分があるのも理解できます。ですから、このようにマイナーチェンジによって性能アップをするというのが、現時点での最適解なのでしょう。
先進安全性能を最優先に進化させるという姿勢がN-BOXが売れている理由を示しています。一部のグレードにだけ先進安全機能を与えるのではなく、どのグレードを選んでも最新のADASが備わっているという安心感がN-BOXにはあります。このようにユーザーマインドにしっかりと応えた進化を続けている限り、N-BOXが売れ続ける状況は変わらないでしょう。
しかし、一強時代というのはけっして健全ではありません。ライバルと目される他モデルがN-BOXを超えることで、より充実したモデルをユーザーは手に入れることができるでしょう。そうなることを期待したいものです。
(山本晋也)