●イメージ戦略と目の前の「困難な課題」への対処
現実的な電気自動車が目白押し。フランクフルトモーターショーの会場を歩いていると、やはりそう感じられずにはいられないわけです。
ホンダ「HONDA e」、フォルクスワーゲン「ID.3」、MINI「クーパーSE」そしてショー開幕直前に発表されたポルシェ「タイカン」。いずれも市販モデルで、しかもテスト的な少量生産ではなく量産を前提。お金を払えばだれでも購入できる、現実的な電気自動車なわけです。
中国で開催された、上海モーターショーでもたくさんの電気自動車が展示されました。しかし市販モデルもあるものの多くはモックアップ(模型)で、現実味はあまり感じなかったんですよね、正直なところ。
現実的な欧州と、どこか眉唾な中国。同じく話題の中心がEVでもなんだか対照的……フランクフルトショー会場の真ん中で、そんなことを感じました。
ところで、今回のフランクフルトモーターショーではどうして市販EVが多くお披露目されたのでしょうか。
その理由はふたつありそう。ひとつは「クルマもこれだけ環境に配慮していますよ。将来はもっとよくなりますからね」というメーカーとしての環境配慮のアピール。もうひとつは来年(2020年)からさらに厳しくなる欧州の燃費規制です。
これは各自動車メーカーのすべての車種の平均燃費(CO2排出量)が基準に満たないと、メーカーにペナルティ(高額な罰金)が科せられるというもの。現時点でクリアできる見込みがたっているのはハイブリッドをすでに広く普及させたトヨタだけと言われています。スゴイなトヨタ。
それをクリアするために、各メーカーはこのタイミングでこぞってEVを投入するのです。なぜなら、EVを販売するとボーナスが加わり計算上大きく有利になるから。だから自動車メーカーは踏ん張りどころ、ということのようです。
(工藤貴宏)