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自動車ディーラーショールームに飾ってあるクルマたち、ピカピカで綺麗ですね。モデルチェンジに伴って、いろいろな車種が切り替わるように展示されています。このクルマたちはどのようにしてショールームの中に入れられているのでしょうか。今回は元レクサスディーラー営業マンが、ショールームへの展示車両の搬入方法をお教えします。
■ディーラーショールームがガラス張りの理由
自動車ディーラーのショールームは外からもクルマが良く見えるようにガラス張りになっていますね。これは展示の意味もありますが、クルマを搬入する上でも必要な機能です。多くのディーラーでは入り口の自動ドアが2重扉になっていたり、裏口の駐車場とつながるガラス面が、大開口のガラス戸となっていて、クルマを入れられるようになっています。
折り畳み式のジャバラカーテンのように開く自動ドアの部分から、通常通りクルマを運転して搬入していきます。大きく開くようになっていても、クルマと扉の隙間はわずかしかありませんので、慎重かつ正確な運転が必要になります。
また、ショールームの2階にクルマが展示してあるお店には、自動車用のエレベーターが配置されており、外の駐車場とエレベーターでつながっていて、2階までクルマを運ぶことができ、その後ショールームの中をゆっくり走行して展示場所までたどり着きます。
●展示されているクルマは走っているクルマと同じ
展示車両は展示のためだけに特別に作られたクルマではありません。皆さんの乗っているクルマと同じように、走るためにメーカーから出荷されたものになります。エンジンをかければ動きますし、ナンバーを付ければ公道も走ることができるのです。
新型車がデビューすると、展示車にするクルマと、試乗車にするクルマを選んでメーカーに注文します。魅せるクルマと乗るクルマです。上級グレードの豪華装備仕様が展示車、スポーツグレードが試乗車のような感じです。新型車として役目を終えても飾られている展示車は、現物を購入することも可能です。注文を受けてから作られる場合に比べて、納期が短く、最短日程で納車されるのが魅力です。
●展示車のバッテリーがあがらない訳
多くのショールームに飾られているクルマが、ライトをつけて目立つように置いてあったり、車内の雰囲気を知ってもらうためにメーター類を点灯させて展示されています。通常、一日中ライトをつけっぱなしにしたり、エンジンをかけずにメーター類を点灯させていればバッテリーがあがりますが、展示車両のバッテリーがあがる状況を見たことはないと思います。
展示車の下には必ずと言っていいほどコンセントがあり、ディーラーショールームから電気をもらっています。いわば家電製品と同じ状態です。コンセントから電気を受けられるようにするために、展示車両専用の電源装置をクルマの中に仕込んでいます。
これは、12V箱型の自動車バッテリーと同じ大きさで、展示車のバッテリーを取り外して、すっぽりと付け替えることで、家庭用コンセントからクルマへの給電が可能な装置です。「電導師」という商品名で販売されており、安全にクルマの細部まで展示できる装置です。
●まとめ
展示車両の秘密について解説してきました。搬入方法から電源の取り方まで、昔は押してクルマを移動させて搬入というケースもあったようですが、今ではショールーム建設の際に、しっかりとクルマの動線を考えて設計してあります。タイミングがよければ、夜な夜な展示車の入れ替えをしているお店を目撃できるかもしれません。
(文:佐々木 亘)