【自動車用語辞典:ボディ「概説」】クルマの基本骨格となるボディの種類・構造・材質を知ろう

■構成部材でもっとも大きく重い

●クルマのサイズやデザインを決定付ける

クルマの基本骨格であるボディは、構成部位の中で最も大きく重く、クルマのサイズやデザイン、性格を決定付けます。

乗員を快適かつ安全に保護するために、強固でしなやかで軽量、さらに美しいフォルムを形作るボディの構造や要素、材質について、解説します。

●ボディ形状の種類

クルマの形状を「1ボックス」、「2ボックス」、「3ボックス」と呼んで分類することがあります。これは、エンジンルームと乗員が乗るキャビン、荷物を載せるトランクの3要素が、いくつの箱(ボックス)で形成されているかを意味します。

1ボックスカーでは、エンジンとキャビン、トランクが一体となって箱型形状に収まっています。セダンは、エンジンルーム、キャビン、トランクが独立した空間をもつ3ボックスカーです。

ボディ形状による分類
ボディをいくつかの箱(ボックス)に見立てて、その箱の数で分類できる

●ボディの構造

クルマの構造は、「ラダーフレームボディ」と「モノコックボディ」に大別できます。

ラダーフレームは、例えばランクルやジムニーのようなオフロードSUVで採用されていますが、ほとんどのクルマはモノコックボディです。

ラダーフレームは、馬車の構造を起源とする昔からある基本的な構造です。

ハシゴ状のフレームの上に別に製造したボディを載せて、エンジンやサスペンションなど主要な部品はフレーム側に装着します。フレーム自体は、独立して強固ですが、重くて車内スペースが十分に確保できないという課題があります。

乗用車のほとんどが採用しているモノコックボディは、ボディとシャシーが一体の卵の殻のような構造です。

一体であるため、ボディ剛性が高く軽量で、車内スペースを確保できます。反面、すべての面で支え合っているので、衝撃が加わったときにボディ全体が大きくゆがみ、最悪の場合は走行困難になることがあります。

ラダーフレームとモノコックの中間的な「ビルトインラダーフレームモノコック」という構造もあります。

ボディの基本構造
ボディにはラダーフレームとモノコックボディがあるが、現在の乗用車ではモノコックが主流となっている

●ボディの材質

ボディには、軽量化と衝突安全性の向上という相反する課題に対応することが求められています。

現在は、低コストで加工性に優れ大量生産に向いている鋼板が主流ですが、適材適所で適切な材料を使うマルチマテリアル化や軽量材料への置換による軽量化が進められています。ボディに限らず、鋼板は最も使用量が多く、クルマ全体の40%(重量比)近くが使われています。

また部位ごとの重量割合では、ボディが最も重くて車全体の30%程度あり、ボディ部材の軽量化が最大のターゲットになっています。

ボディ各部位の重量割合
ボディはクルマの部位で一番重い

現在積極的に採用されているのは、軽量で衝突エネルギー能力が高い高張力鋼板(ハイテン)です。最近は、980MPaや1180MPa、1470MPaの超高張力鋼板の採用が進んでいます。

また高張力鋼板と並行して、アルミ(鉄の1/3の比重)の採用も進んでいます。代表的なのは、ホンダ・NSXのアルミボディで、通常の鋼板に比べて40%の軽量化を実現しました。ただしアルミを使う場合、鋼板との異種接合部の強度を確保するための特別な技術が必要です。

現在最も注目されている材料は、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)です。BMWのEV車「i3」は、ボディ上部をオールCFRP製として大幅な軽量化を実現しました。まだコストや生産性に課題はありますが、圧倒的な軽量と強度はボディにとっては大きなメリットであり、徐々に採用例が増えつつあります。


軽量化と衝突安全性向上という相反する課題の解決を担っているのは、ボディ技術の進化です。特にボディの軽量化が進めば、今後さらに厳しさを増す燃費規制へ大きく貢献できます。

本章では、ボディの基本構成や構造、材質などについて、詳細に解説していきます。

(Mr.ソラン)

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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