【自動車用語辞典:タイヤとホイール「ホイール」】ドライブシャフトとタイヤを連結する回転部品。強さと軽さ、ファッション性が求められる

■寸法精度や重量バランスなどを軽視すると危険

●装着時にはバランス取りが必須

ホイールには、タイヤとともに車体を支えながら駆動や制動、路面からの衝撃などに耐えられる強度と、一方で軽量化とファッション性が求められます。

ファッション性が優先して機能があまり目立たないホイールですが、その機能の重要性について解説していきます。

●ホイールの役割と構造

ドライブシャフトの駆動力は、ハブを介してタイヤがはめ込まれているホイールに伝えられます。

ホイールには、車体を支えながら駆動や制動、路上からの衝撃などに耐えられる強度とともに、一方で軽量化も求められます。また機能面だけでなく、その意匠はクルマのファッション性やドレスアップのキーパーツでもあります。

ホイールは、タイヤを保持するリム、ドライブシャフトに取り付けられているハブとリムを連結するホイールディスクから成ります。

ホイールの断面図
ホイールサイズはリム径、リム幅のほか、ハブ径やPCDで決まる

ホイールの構造としては、リムとディスクを一体成形した1ピース、リムとディスクを溶接した2ピース、表側/裏側リムとディスクをボルトで一体化した3ピースがあります。

・1ピース

軽量ながら剛性が高く、製造がシンプルなためコストを抑えることができます。メーカーの純正品は、安価な1ピースが主流です。また剛性が高いので、スポーツホイールに採用されています。

・2ピース

最近のアルミホイールの主流で、デザインやオフセットの自由度が高く、さまざまなバリエーションが楽しめます。

・3ピース

デザインの自由度がもっとも高く、ドレスアップホイールとして人気が高いホイールです。

1ピース、2ピース、3ピースの模式図
ホイールはディスクとリムに分けられ、リムはさらに表側と裏側に分けられる

●ホイールの材質

ホイールの材質としては、スチールとアルミニウム(合金)ホイール、マグネシウム(合金)があります。かつては安価なスチールホイールが一般的でしたが、最近は軽量でファッショナブルなアルミホイールが標準的になっています。

アルミの比重はスチールの1/3で軽く、熱伝導率が高く放熱性に優れています。しかも、加工性に優れデザインの自由度が高いため、スチールよりも高価ですが主流となりました。

またマグネシウムホイールは、アルミホイールよりさらに軽量で走行性能や燃費性能に有利です。レース車では主流ですが、高価なため採用は限定されます。

●鋳造製法と鍛造製法

アルミホイールの製造法には、鋳造製法と鍛造製法の2種類があります。

鋳造製法は、ホイールの金型に溶かした材料を流し込み、それを固めて成形する製法です。同じ型から作るので生産性が良く、軽量化、コスト面で優れています。

鍛造製法は、型に合わせて材料を叩いて作る製法です。手間がかかる分コストがかかりますが、金属組織が緻密になるため、高度や剛性が高められます。

●ホイールバランス

タイヤとホイールは、円周方向の重量配分は必ずしも均一ではなく、例えば空気バルブや駆動系の影響などによって重量配分にムラが発生します。この状態で走行すると特定の走行(回転)条件で共振現象が発生します。共振が起こると、ボディとステアリングに不快な振動を発生させます。

そのため、タイヤ組付け時にはホイールバランサーによって、タイヤとホイールのバランスをみて、軽い部分のリムにバランスウェイトを貼り付けてバランスを取ります。バランス調整は、ホイール交換時には必須の作業です。


クルマのドレスアップといえば、まずはホイールの交換であり、機能というよりはファッション性が優先されるのは、昔も今も変わらないようです。

しかし、ホイールはドライブシャフトとタイヤを連結する回転部品なので、寸法精度や重量バランスなどを軽視すると、危険なことを認識しておく必要があります。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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