目次
■空気圧低下は操安性や燃費の悪化を招く
●日本では法制化の検討段階
米国や欧州で装着が義務化されているTPMS (Tire Pressure Monitoring System = タイヤ空気圧監視システム)は、タイヤの空気圧低下を検出してドライバーに警告するシステムです。安全だけでなく、燃費向上にも効果的なことから、注目されています。
日本では、まだ法制化の検討段階のTPMSですが、解説していきます。
●TPMS法制化の経緯
TPMSは、2007年からアメリカで装着が義務付けられたタイヤ空気圧監視システムです。4本のタイヤの空気圧を常時モニターして、圧力が規定値以下になるとドライバーに警告を発します。
米国で装着が義務化された経緯は、2000年頃にファイヤーストーン社のタイヤがバーストして多数の大事故が発生したことに起因しています。タイヤの構造に問題があったためファイヤーストーン社はリコールをしましたが、空気圧を管理していないドライバーにも責任があるということから、TPMS装着が必要との結論に至ったわけです。
タイヤバーストに至らないまでも、空気圧が低下するとタイヤの変形による劣化の促進や操縦安定性の低下、燃費悪化を招きます。
●空気圧に無関心な人が多い
一般車両のタイヤの空気圧を無作為に調べると、規定値よりも5~10%程度低い車両が30%近くあったと、国交省が発表しています。またタイヤの空気圧が20%下がると、市街地走行で2%、郊外路走行で4%程度燃費が悪化すると言われています。
●TPMSの仕組み
4本のタイヤのエアバルブ内に送信機と一体化した圧力センサーを取り付け、空気圧と温度を直接測定し、その情報を無線で車両側の受信機に送ります。空気圧が所定の閾値を下回った場合に、インパネなどの警告灯の表示によって、異常空気圧であることをドライバーに知らせます。
上記のように空気圧を測定する「直接式TPMS」が主流ですが、以下のような簡易な「間接式TPMS」を採用している例もあります。
間接式TPMSは空気圧を測定するのではなく、代わりにABS(アンチロックブレーキシステム)で使っている車輪速センサーを利用します。もし、どこかのタイヤの空気圧が低下すると、タイヤの外径が小さくなり、他の3輪との回転差が生じます。この回転差を検出して、異常を警告するシステムです。
現在ほとんどのクルマには、ABSが装備されているので制御ソフトの変更だけで簡易に対応でき、低コストなことが間接式の最大のメリットです。BMW、ダイムラーベンツなどの欧州車の一部は、間接式TPMSを採用していますが、直接式に比べると信頼性が劣るためアメリカの法規には適合できません。
●米国や欧州では装着が義務
米国や欧州では、TPMSの装着は義務化されていますので、日本で走る輸入車にはTPMSが装備されています。
日本ではまだ法制化の検討段階ですが、パンクが判別しにくいランフラットタイヤには、装着が義務付けられています。純正でランフラットタイヤを装着しているトヨタ・レクサスや日産・GT-Rには直接式TPMSが装着されています。
TPMSは、当初はタイヤの空気圧低下を検出して安全走行を保証するために開発されました。
最近は、タイヤの空気圧を適正に保つことで燃費が向上し、CO2削減にも貢献することから、燃費向上技術のひとつとして注目されています。
(Mr.ソラン)