【自動車用語辞典:タイヤとホイール「タイヤノイズの低減」】騒音規制で注目され始めたタイヤノイズを抑える工夫

■タイヤノイズは3つに大別できる

●吸音材やレゾネーターを用いた低減策が主流

車外騒音規制が強化される中、車外騒音の要因のひとつであるタイヤノイズは、電動化が進む中で目立ちやすくなっており、タイヤノイズの低減は課題のひとつとなっています。

ノイズ軽減技術として、吸音材を利用した「インナータイヤアブソーバー」と、レゾネーターを利用した「ノイズリデューシングホイール」について、解説していきます。

●タイヤが発生する3つのノイズ

タイヤノイズには、大別して3種類あります。

・路面の凹凸をタイヤが拾い、振動となって車体を震わせることで発生するロードノイズ
・タイヤのトレッドパターンにより、溝の中の空気が圧縮・放射されて発生するパターンノイズ
・タイヤの中の空気が振動することによって発生する空洞共鳴音

ロードノイズやパターンノイズは、車体側の改良やタイヤの構造や素材、パターン配列の改良で対応するのが一般的です。しかし、空洞共鳴音はそれだけでは抑えるのは困難です。

空洞共鳴音は、路面の段差や突起を乗り越える際に、タイヤの変形によってタイヤ内の空気が振動し、共鳴が起こる現象です。太鼓の膜を叩けば、中の空気が振動してより大きな音になる現象に例えると、分かりやすいと思います。

以下に、空洞共鳴音を下げる2つの技術を紹介します。

●インナータイヤアブソーバー

空洞共鳴音を低減させるために、タイヤメーカーが開発したのが「インナータイヤアブソーバー(振動吸収装置)」です。

タイヤ内部に吸音材のポリウレタンスポンジを貼り付け、空気の振動を吸収低減します。発泡剤を混ぜたスポンジ状のポリウレタンは、音の反射を低減する吸音効果に優れており、アンダーフロアの騒音対策の吸音材としても使われています。

ダンロップがインナータイヤアブソーバーを初めて採用し、現在のところ日本で採用しているのはダンロップのみです。

一方、欧州タイヤメーカーのピレリやコンチネンタル、ミシュランは、それぞれ名称は違いますが、同様の技術を高級車用として採用しています。日本メーカーよりも欧州メーカーの方が、積極的に採用しています。

●ホンダのノイズリデューシングホイール

吸音材を使うのではなく、ヘルムホルツ型レゾネーターで空洞共鳴音を減少させるのが、ホンダの「ノイズリデューシングホイール」です。トヨタも同様の技術を採用しており、「ノイズリダクションホイール」と呼んでいます。

ノイズリデューシングホイールでは、タイヤとホイールの間に中空構造の樹脂製のプレート(レゾネーター)を挟み込んでいます。樹脂プレートには、ホイールリムに沿って連通穴があけられています。

レゾネーター容積と貫通穴を最適化してヘルムホルツの原理によって、プレート内部とタイヤの空気を共振させて、共鳴音を打ち消し低減しています。

インナータイヤアブソーバーとノイズリデューシングホイール図解
インタータイヤアブゾーバーは吸音材、ノイズリデューシングホイールは樹脂製プレートでノイズを抑える

エンジンを搭載しないEVやエンジンが停止することが多いHEVやPHEVでは、今までエンジン音や排気音でマスクされていたタイヤノイズが目立つようになります。

今後、段階的に燃費規制とともに車外騒音も強化される計画なので、タイヤに対して低燃費ととともに低騒音の要求がさらに高まります。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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