【SUPER GT 2019】表彰台、ポイント獲得とModulo勢にとって大きなターニングポイントとなった富士500mile(PR)

■スーパーGT2019シーズン後半の始まり「FUJI 500mile」をModuloはどう戦った?

8月3、4日に富士スピードウェイで開催された「2019 AUTOBACS SUPER GT Round 5 FUJI GT 500mile RACE」。2019後半戦の始まりとして今シーズンのSUPER GTでは最長距離となる500マイル、すなわち800kmというレース距離はGT300とGT500それぞれのModulo勢にとってどんなレースだったのでしょうか。

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積み重ねてきたものが大きく花開いた34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3

GT300の34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3は2019シーズンの開幕戦岡山で9位、第3戦鈴鹿で7位、第4戦タイで10位という成績でシフトトラブルによるリタイアを喫した第2戦の富士500km以外はすべてポイントを獲得しています。

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しかしこれまでの4戦ではポイントは獲得したものの何らかのトラブルを抱えての参戦であったことは否めません。特に第4戦タイでは予選でABSトラブル、決勝ではブレーキパッドの激しい摩耗という状況で正直な話思うように走れなかったといいます。しかしそんな状況でも10位に食い込みポイントを獲得してきた諦めない姿勢は多くの共感を呼び、チームの人気として反映されていることも否めません。

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この富士500mileレースでも予選順位はほぼ定位置とも言える8位。しかしその内容にはこれまでと大きく違う部分があります。

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予選Q2でアタックをした大津弘樹選手は「タイヤのピークを外した結果」という8位のポジションですが、アタックラップ2周めの第3セクターを区間トップに迫る勢い、そして続く3周目の第1セクター、第2セクターをすべて区間トップとしており、タイヤピークをもう少しあとにずらせていたならばポールポジションも夢ではなかった、というタイムを出しています。

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2018年に参戦してからトップに食いつくようなタイムを出せなかったのが嘘のようなこの今回の富士500mileレースでの予選タイム。

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ほぼダメ出しは終わったのではないかということを感じたのが3日午前中に行われたフリー走行。これまではトップグループから1秒近く遅いタイムで推移していたラップタイムがほぼ同レベルに近づいてきています。

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予選Q1で道上龍選手は「フリー走行から少し進化させたセットにしたら不発だった」と言いながらもQ2には進出。インターバルの間にフリー走行のセッティングに戻してQ2を大津選手に託します。その結果がポールポジションに限りなく近い8位、ということなったのです。

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タイで懸念されていたブレーキトラブルについて道上選手は「ブレーキパッドを銘柄変更して、そこの耐久仕様のパッドに入れ替えた」とのこと。また「GT3マシンはブレーキローターやキャリパーの仕様変更が認められていないのでパッド以外では性能向上できない」と説明してくれました。

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長距離レースではピットワークも重要で作業時間を短縮すればそれだけポジションを上げる可能性が出てきます。タイヤ無交換作戦をするチームはその作業時間の短縮を狙ってのものなのですが「Modulo KENWOOD NSX GT3は特性上4本をすべて交換しないといけない。タイヤでリスクを負うわけには行かない」ということで義務付けされた4回のピットインで必ず4本交換を行います。「毎回フレッシュなタイヤにすることで、その作業時間の差をコース上で縮めていこうと考えています」と道上選手は語ります。

またピット作業の工程削減もさることながら、素早さも重要な鍵となりました。最後のピットインではその時点での3位争いをしていた61号車 SUBARU BRZ R&D SPORTと同時にピットイン。Modulo KENWOOD NSX GT3のピットはSUBARUの2ブロック先にあり、先に作業を始めたのはSUBARUでした。が、給油とタイヤ交換という同じ作業をModulo KENWOOD NSX GT3は8秒も早く終わらせコースに復帰。ピットワークでSUBARUを追い抜いたのです。このときの様子を最終スティントを担当した大津選手は「全体的に燃費をいい状態で保てたので最後の給油時間をかなり短くできた」と語ります。

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そのピットワークのおかげでSUBARUを追い抜いただけではなく、すべてのチームが最後のピットインを終えたときには4位というポジション。しかも3位の18号車 UPGARAGE NSX GT3は目の前にいたのです。

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「レースのときは人が変わる、とよく言われんですよ」と語る大津選手が目の前の敵に襲いかからないわけがありません。158周目のTGRコーナーで仕掛けた大津選手。その後のコカ・コーラコーナーまで2台がワイドになりながら激しいドッグファイトを繰り広げながらコーナーに侵入していきます。こういうときの大津選手は行ける限りは全く引く素振りを見せません。その後のトヨペットコーナーでModulo KENWOOD NSX GT3が前に出て3位浮上。この観ているものを熱くさせる激しいバトルが大津選手の真骨頂。

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そして18時40分に周回数ではなく制限時間いっぱいということで降ろされたチェッカーフラッグ。昨年はフリー走行でのクラッシュで走ることができなかった富士500mileの雪辱を表彰台に登ることで返したのです。

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3位となり表彰台に上がった道上選手と大津選手。2018年のオートポリス戦以来の表彰台となります。今回の結果を踏まえてレース全体について道上選手に伺ったところ「マシンにしてもピットワークにしても特別に何かが変わったということではなく、これまでの積み重ねの成果」と語っています。また「SUPER GTではないですが次のSUZUKA 10Hに向けてのデータもきっちり取れているので、そちらも期待できます」と語ります。

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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