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■日本車ではトヨタ・ソアラが初採用
●高コストや燃費への影響が課題
走行状況や路面状況に応じてショックアブソーバーの減衰力を自動的に制御することで、乗り心地と操縦安定性の両立を図る方法として、アクティブサスペンションがあります。
コストがかかるため、採用は一部の高級車に限られますが、アクティブサスペンションの仕組みと効果について、解説していきます。
●アクティブサスペンションの役割
一般的なサスペンションは、ショックアブソーバーによる減衰力は一定です。
減衰力が柔らかい場合、ショックアブソーバーが速く動き乗り心地は良好ですが、ロールが大きくタイヤの追従性が損なわれます。一方固くすると、ショックアブソーバーがゆっくり動き車体姿勢は安定しますが、乗り心地は悪化します。
一般に乗り心地と操縦安定性は相反する関係にあり、また運転条件によって最適な減衰力は異なります。この乗り心地と操縦安定性を両立するために、アクティブサスペンションが開発されました。
アクティブサスペンションでは、車速や車体姿勢、操舵角、路面状況などを検出して、状況に応じてショックアブソーバーの減衰力を自動的に最適化します。
●アクティブサスペンションの歴史
アクティブサスペンションを日本で最初に採用したのは、1983年の初代トヨタ・ソアラのTEMS(Toyota Electric Modulated Suspension)です。
上下G(加速度)センサーや舵角センサー、車速センサーなどで走行状況を検出して、減衰力を3段階に可変化するシステムです。減衰力の切替えは、ロータリーバルブの回転によって、ショックアブソーバーのオイル通路のオリフィスを切替えることで実現しました。
その後、油圧制御による油圧式アクティブサスペンションやバネの代わりに空気圧を使う空気バネ式サスペンションなども実用化され、センシングと制御を高精度させたAVS(Adaptive Variable Suspension System)へと進化しました。
最新のものでは、ピエゾアクチェーターを用いて、よりきめ細かい高精度制御ができるAVSを実用化しています。
トヨタだけでなく、1980~1990年代には多くのメーカーから油圧式や空気バネ式など、さまざまなタイプのアクティブサスペンションが実用化されました。
●油圧式アクティブサスペンション
油圧式アクティブサスペンションは、ショックアブソーバーの代わりに油圧アクチュエーターによって、走行状況に応じて最適な車高や減衰特性を実現します。アクチュエーターは、パワーシリンダーと内蔵のピストンロッドで構成され、油圧によってサスペンションのストロークを制御します。
以下のような作動原理によって、車体を安定させます。
クルマが窪みに入った場合、タイヤ下降分に相当した油圧をパワーシリンダーに供給し、ピストンロッドを持ち上げて車高を一定に保ちます。逆に突起部に乗り上げた場合は、タイヤ上昇分に相当するオイルを排出してピストンロッドを下げて車高を保ちます。
空気バネ式アクティブサスペンション(エアサス)では、コイルスプリングの代わりにエアチャンバーを用います。エアチャンバーに供給する高圧空気を制御することによって、減衰力を最適化します。バスでは積極的に採用されていますが、乗用車では構造が複雑なため一部の高級車の採用にとどまっています。
アクティブサスペンションは、コストが標準的なサスペンションの2~3倍はかかるため、さらに油圧方式や空気バネ式では油圧ポンプやコンプレッサーが必要なため、燃費の悪化を招きます。
コストパフォーマンスの良い技術とはいえず、採用は一部の高級車にとどまっています。
(Mr.ソラン)