■信号機のない横断歩道、歩行者が待っていればクルマは止まらねばならないが……
社会的なトレンドとして、自動車のルールやマナーについて厳しい目が向けられています。高齢ドライバーやあおり運転など社会問題化しているテーマも増えています。そうした中で、いま最新トレンドといえるのが「横断歩道での一時停止」ではないでしょうか。
本来、信号機のない横断歩道においては自動車は「横断しようとする歩行者が確認できなくても、停止線で止まれる速度で走行する」こと、横断者がいた場合は「かならず一時停止をする」こと、そして「横断歩道の手前30mは追い越し・追い抜きが禁止」といったルールが道路交通法によって定められています。
しかし、実際には信号機のない横断歩道を歩行者が渡ろうとしているときに9割以上のドライバーが一時停止をしていないという調査結果もあります。歩行者の立場でも、それが当たり前になっています。歩行者の自己防衛を考えると一時停止をしない確率の高い中でクルマが停止するのを期待して横断歩道を渡ろうとするのはリスクもあります。
そうした理由のひとつに、そもそも横断歩道の存在に気付いていないドライバーが多いのではないでしょうか。横断歩道の存在を示すものとしては路面に書かれたひし形の道路標示が知られているところですが、補修が追いつかないためか薄くなっているところも少なくないようです。ひし形の道路標示が見えづらい状況では、横断歩道自体も消えかかっていたりします。
不慣れな道路ではドライバーが、その存在に気付きづらい状況にあるのも事実でしょう。歩行者も、交通事故の報道もあって歩道の奥で待つようになっている人も増えていますから、渡ろうという意思が見えづらいという面もあるかもしれません。
しかし、横断歩道があることを示すのはひし形の道路標示だけではありません。青い三角形に大人や子どもが渡っている様子を示した道路標識が存在しています。この標識があればそこには横断歩道が存在しているというわけです。公道を走る際には道路標識を確認するのは当然の義務です。標識に気付かなかったというわけにはいきません。
それでも標識を見落としてしまうことは起きてしまいます。正論でいえばそうしたミスを犯すドライバーが悪いのですが、機械でフォローできるのであれば、それに越したことはないでしょう。いずれにしても、安全な交通社会につながることが自動車に関わるすべての人の願いだろうからです。
すでに、道路標識については一時停止や進入禁止、指定速度や追い越し禁止などを認識してメーター内に表示することで注意喚起をするという機能が実装されています。横断歩道の標識も認識できるようにすることで、見落としを防ぐことはできるのではないでしょうか。
社会問題へ自動車メーカーのできることとして、そうした対応に期待したいものです。
(山本晋也)