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■電動車や運転支援には必須の技術
●アシスト方法によって3つに大別できる
今や乗用車のほとんどが採用するのが、電動パワーステアリング(EPS)です。油圧パワーステアリングのような燃費悪化がなく、電動車や運転支援技術が普及する流れの中では、必須の技術です。
電動パワーステアリングの仕組みや特徴について、解説していきます。
●なぜ電動パワーステアリング(EPS)が必要か
油圧パワーステアリングは、油圧を利用してステアリング操作を軽減する機構です。EPSは、油圧の代わりにモーターの駆動力を利用してステアリング操作力をアシストする方式です。現在ほとんどの乗用車は、軽量コンパクトな電動パワーステアリングを採用しています。
油圧式では、オイルポンプをエンジンで駆動するので燃費悪化を伴う、エンスト時に操作力アシストが効かなくなるなどの問題がありました。EPSによってこれらの問題が解決し、さらに軽量コンパクトや油圧作動音の解消、油圧系メンテナンスが不要になるといったメリットがあります。
最近は、走行中にエンジンを停止させる電動車や自動操舵のような運転支援技術が進み、ステアリングの電動化は不可欠となっています。
●EPSの作動原理
EPSは、主としてラックアンドピニオン方式で採用され、モーターの駆動力を利用して必要なときだけステアリング操作力をアシストします。
システムは、モーターとモータートルクを増幅する減速機、トーションバーの捻じれから操舵力を検知するトルクセンサー、操舵角を検知する操舵角センサー、電子制御ユニットで構成されます。
モーターの駆動力は、操舵力やステアリング舵角、車速情報などから決定されます。
●EPSの種類
EPSには、モーターがどの部分に取り付けられているか、どこで操作力をアシストするかによって3種類に分けられます。「コラムアシスト式」と「ピニオンアシスト式」、「ラックアシスト式」です。
コラムアシスト式
ステアリングシャフト上部のコラム部にモーターと減速機、トルクセンサーを組み付けて操作力をアシストします。
ピニオン軸やラックなどは変更することなく流用でき、低コストが最大の利点です。ただし、モーター以降の距離が長いため強度を確保する必要があり、大きなアシスト力は発生できないので小型車向きです。
ピニオン式
ステアリングシャフト下部のピニオンギアにモーターと減速機、トルクセンサーを組み付けて操作力をアシストします。
ステアリングシャフトやジョイントなどの上流部は従来機構のままです。ラックに噛み合うピニオンギアを直接駆動するので、コラム式より大きなアシスト力が使えます。ただし、ピニオンギアにはより大きな強度が必要になることから、アシスト力には限界があります。
ラック式
ピニオンギアが噛み合うラック軸状にボールねじを組み込み、モーターでボールねじを駆動させます。
ボールねじの強度を上げれば大きなアシスト力にも対応できるため、大型SUVや高級車で採用されています。機構が大型になり、コストが高いことが課題です。
現時点は、低コストで搭載性が高いコラムアシスト式が過半数を占めています。今後も小型車の需要が大きい地域を中心に、採用が増加する見込みです。
またラックアシスト式は、ピックアップトラックやSUVでの需要が増加しますが、その分中間的なピニオン式は重要が減ると予想されています。
(Mr.ソラン)