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■自動運転レベル2までが運転支援
●衝突被害軽減ブレーキのほか車線維持支援や車線変更支援も
将来の自動運転に向けてベースとなるのが、現在実用化が進んでいる運転支援技術です。多くのクルマに採用されている衝突被害軽減ブレーキ(AEB)、追従機能付クルーズコントロール(ACC)、車線維持支援(LKA)などの運転支援技術を取り上げて、解説していきます。
●運転支援技術
自動運転のレベル分けでは、レベル2までが運転支援、レベル3以上が自動運転に分けられます。部分運転自動化のレベル2は、加速(アクセル)、操舵(ステアリング)、制動(ブレーキ)のうち複数をシステムが支援します。一方、条件付き運転自動化のレベル3は、限定された条件ですべてをシステムが支援します。
以下に、代表的な加速、操舵、制動に関わる運転支援技術について概説します。
●自動緊急ブレーキ(AEB:Autonomous Emergency Braking)
予防安全の基本は、危険を察知してブレーキをかける、自動緊急ブレーキシステムです。前方の車両や人、障害物を検知して、衝突回避あるいは被害軽減のために自動的にブレーキを制御します。
障害物を検知する方式(センサー)は、大きく分けて3種類あります。
・ステレオカメラ方式は、障害物の形状(人間、自転車など)が認識でき、中距離(100m程度)まで検知できます。逆光や雨、霧などの悪天候によって、機能が低下する欠点があります。
・赤外線レーザー方式は、検知距離は30m程度と短く、低速30km/h以下までしか検知できません。コストが安く、軽自動車などに採用例が多いです。
・ミリ波レーダー方式は、カメラ方式より遠方(150~200m)まで検知でき、天候に左右されない利点があります。一方で、形やサイズなどの詳細な識別ができず、コストは最も高いです。
●追従機能付クルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)
ブレーキに加えてアクセルも操作して、前方車両を検知しながら一定車間距離を維持しつつ、定速走行を行います。高速道路や自動車専用道路の使用が前提なので、前方車両のセンシングはステレオカメラか、ミリ波レーダーが使われます。進化版として、渋滞路で前方車両の停止、発進にも追従する、渋滞追従機能付ACCもあります。
●車線維持支援(LKAS:Lane Keep Assist System)
高速道路で、車線の中央付近を走行するようにステアリング操作を支援し、安全かつドライバーの運転負荷を軽減します。車線をはみ出しそうになると、警告を発して(多くは、ハンドルの振動)ステアリング操作の支援を行います。車線を検知するため、カメラの搭載が必須です。
LKASの前段階の技術として、車線を逸脱しそうなると警報のみを行う車線逸脱警報システム(LDW:Lane Departure Warning)があります。
●自動車線変更支援(LCA:Lane Change Assist)
高速道路や自動車専用道路を走行中、ウィンカーの操作をトリガーにして車線変更を行います。車線変更のためのステアリング、アクセル・ブレーキ、周辺の車両監視の支援を行います。
トヨタのレクサスLSのLCAでは、一般的なミリ波レーダーとステレオカメラの組み合わせに加えて、周辺の走行車両を監視する前側方レーダーや後側方レーダーを装備しています。
現在手放し運転は法規上禁止されていますので、車線変更時でもハンドルには手を軽く添えておく必要があります。
●その他
近距離センサーである超音波センサーやカメラを活用した自動駐車システムやAT誤発進抑制制御が実用化されています。
運転支援のベースとなる自動緊急ブレーキ(AEB)や追従機能付クルーズコントロール(ACC)、車線維持支援(LKAS)は、すでにほぼすべてのメーカーが採用している技術です。現在は、多くのメーカーが高速道路での自動車線変更支援(LCA)の実用化を目指しています。
LCAが本格的に普及すると、いよいよ自動運転に向けての幕開けになりそうです。
(Mr.ソラン)