目次
■1980年代に生まれた歴史ある技術
●燃費/CO2規制の強化で注目を集める
1980年代には大排気量エンジンに採用されたものの、その後存在が薄らいでいった休筒システムが、燃費/CO2規制の強化とともに再び注目を集め始めています。
休筒システムの機構とメリット、今後の普及の可能性について解説していきます。
●休筒(気筒停止)の歴史
休筒は、作動中のエンジンの特定気筒を休止、燃焼を休止させることで、アイドルや低速運転の燃費を低減するシステムです。
初めて休筒を採用したのは、1981年のGMキャデラックV8エンジン、日本では1982年の三菱4気筒「MD(可変排気量)」エンジンです。その後も採用例は少数ですが、欧州と米国メーカーが継続的に採用し、日本では2003年にホンダがVTECをベースにした休筒システム「VCM(可変シリンダーマネージメント)」をアコードV6エンジンに採用しました。
最近になり、2012年にVWゴルフ1.4Lがダウサイジング直噴ターボに採用、さらに2018年に入ってマツダがCX-5のSKYACTIV-G 2.5Lに採用し、再び注目され始めました。
●どのように休筒するのか
休筒を実現する代表的な手法は、ロッカーアームを空打ちさせる手法と、弁リフト量の可変機構を利用してゼロリフトカムに切り替える手法です。
これらの手法によって、特定気筒の吸・排気弁の駆動を停止(ピストンは作動)して、シリンダー内の燃焼を停止させます。点火プラグの放電は、再燃焼(作動)時の汚れによる失火を回避するため継続しておきます。
吸・排気弁が駆動しないのでシリンダー内は密閉状態ですが、ピストンで圧縮して膨張させるという正負の仕事がバランスするために、損失は発生しません。密閉することによって、シリンダー内の温度が維持され、再燃焼しやすくなる効果もあります。
当然ですが、ピストンの往復運動による摺動抵抗は発生します。
●休筒のメリットとデメリット
特定の気筒を休止させることは、見かけ上排気量を小さくするのと同じです。したがって、同じ出力を得るためにスロットル開度は大きくなり、ポンプ損失が低減します。さらに燃焼気筒が減ることによって、排気損失や冷却損失も減少することから、総合的にはアトキンソンサイクルやクールドEGRと比べても同等の効率が実現できます。また弁駆動を停止するため、駆動損失の一部も減少します。
課題は、当初から市場で不満が多かった切り替え時のショックと休筒時の振動です。
切り替えショックについては、直噴化や制御の高度化によって最近の採用例ではほぼ解消されています。振動については、4気筒であれば2気筒作動に、6気筒であれば4気筒ないし3気筒作動になるため、不利になることは否めません。しかし、フライホイールやクラッチディスク、エンジンマウントなど振動低減の要素技術の進化によって、改善されつつあります。
●代表的な休筒システム
弁リフト量の可変機構を利用してゼロリフトカムに切り替える手法としては、ホンダのVTECをベースにした「VCM」や、VWのAVS(アウディ・バルブリフトシステム)ベースの「ACT(アクティブシリンダーテクノロジィ)」などが代表例です。
ロッカーアームを空打ちさせる手法は、ダイムラー「AMG」のV8や、マツダCX-5のSKYACTIV-Gで採用されています。
1980年代に休筒システムがブームになったときには、振動の問題もあり、主として6気筒以上の大排気量エンジンで採用されていました。
最近、欧州では4気筒や3気筒で採用した例が増えています。ただし、休筒が得意な(燃費が良い)のは定常の低速走行であるため、日本の走行事情では期待するほどメリットが出にくいという難点があります。
(Mr.ソラン)