井出有治がレクサスRCFを全開試乗。上品さのないV8&カーボンブレーキのパフォーマンスは?

■井出有治、初めての「レクサス」、初めての「RC F」を富士スピードウェイで全開試乗!

MCを受けたレクサス「RC F」。GT3仕様のRC FがS-GTのGT300で活躍中なのでレースの世界でもお馴染みです。

が、意外なことにclicccarテストドライバーであり、S-GTではGT500もGT300も乗ってきた元F1レーサーの井出有治さんは、「サーキットでも公道でも、RC Fというかレクサスのクルマに乗るのが初めて!」なんですって。「レースでもニッサン、ホンダ系は多く乗ってきましたけどトヨタ系は…」、そ~いえば。

ならば、先入観無しのインプレッションが聞けそう!

では、まずはエンジン、ブレーキ、タイヤなどについて聞いてみましょう。

■エンジンは「レクサス」らしい上品さはまったく無い、気持ちいいV8!

『絶滅危惧種』とも言われるV8 NAエンジンの感じはいかがでしたか?

「忘れてたんですけど、コレってV8 5L NAなんですよね! なにせボク、レクサスに乗るのが初めてでしょ?『レクサスはお上品なクルマ』っていうボクの勝手なイメージで走り出したら、いきなりドロドロドロ~!ってきたんで一瞬『アメ車!? 』って思ってしまった(笑)。2日前に乗った韓国のレーシングカーがV8なので同じ感覚になっちゃった!

V8 NAの481psはいい意味で上品さなんかまったく無く、でもパワーは下からフラットな感じなので扱いやすいし、ヘンにどこかでドカンとくる感じもなかったですね。スポーツ+にすればアクセルレスポンスがポンと上がってくれるし。デフのギヤ比を低く設定してあるため、加速がグンと上がるのも気持ちいいです」(井出)。

チタンマフラー(触媒以降のみ)の音って加速していくと気持ちいいとか?

「マフラーの違いは重量を考えてのことが一番だと思いますよ。もちろん、ステンレスとチタンでは音質は違うけど、音量的には変わりなし。チタンのほうが多少カラカラカラ~ってなるけど、言われなかったら分からないレベル。こればっかりは好みでしょうね」(井出)。

■カーボンブレーキのパフォーマンスは、もっと周回を重ねたうえで明らかになる?

井出さん、ハイパワー車で一番重要となるブレーキを入念にチェック。パフォーマンスパッケージとベース車のブレーキの違いはどんな感じなのでしょう?

「パフォーマンスパッケージのカーボン(ブレンボ製)では、ブレーキペダルのストローク量を増やしているそうです。ということは、踏力が低いところでのコントロール性を上げているということ。『踏めばそれなりにキチッと効く』とレクサスの方の説明があり、軽く踏みながら徐々に踏み足す感じで踏んでいって、それでも余裕がありそうな感じは無いんですけどぉ~!?と思って強めに踏んでみたんですけど、最初のうちはダンロップコーナーを下った一番きついヘアピンでオーバースピードっぽくなってしまいました」(井出)。

ソレってカーボンブレーキは効かないってことなんですか?

「いやいや違いますよ! 普通、レースではタッチが柔らかい状態で踏み込んじゃうとローターをやっつけちゃうしどんどん性能も低下してくるんです。その感覚でこれ以上踏まないほうがいいのかな?って最初は思ったけど、徐々に遠慮なくガーン!と踏み込んでみたところ、タッチは柔らいものの、踏み込んじゃえばキチッと効いてくれました。

そもそもカーボンブレーキは、周回数を重ねて熱が入ってくるとどんどん効いてくるっていう特徴があるんです。なのでもっと周回を重ねれば、パフォーマンスパッケージにカーボンブレーキを奢った意味が分かるでしょうね」(井出)。

カーボンブレーキに乗り慣れていないと初期の冷間時には効きが悪いのか?と思いそうですが、熱が入ってから先に行くほどカーボンブレーキのありがたみが分かるってことなんですね!

ベース車のほうはどうですか?

「ベース車のスチール(これもブレンボ製)、これが思いのほかちゃんと効いていました。ただパッドがローターを掴んだときの感じは、やっぱりカーボンのほうが止めてくれるという安心感はあるけど、3LAP走った中ではこのスチール製は安定して変化も少なかったです。スチールとはいえブレンボ製ですからね、十分なストッピングパワーがありますよ」(井出)。

■ダンパーはさすが、ザックス製!

ダンパーもテストにテストを重ねたそうですが…。

「ザックス製のリニアソレノイド内臓のアブソーバー、30段階の細かい制御がされているっていうのは、さすがザックスって感心しました。クルマの姿勢に一番影響するところが低速域のロールしていくようなところ。ここのしっかり感があるのが良いダンパーなんです。あまり性能の良くないダンパーだとゴツゴツしちゃってタイヤが路面から離れやすくなって追従しにくくなるんですけど、そこを追従しながらもしっかり感を上手く出せていますね」(井出)。

ベース車とパフォーマンスパッケージでダンパーは一緒ですね!

「重心の違いで足まわりの感覚は違いますよ。車重が違うっていう単純な数字よりも、重心位置が低いか高いかでまったく違うんです。特に高速コーナーでは重心の高さのため、ベース車はアンダーステアが出ていましたね」(井出)。

■テスト車両がお疲れ気味? 同仕様でも個体によって感じがちょっと違う!?

「なんだか車両ごとに個体差が出てるのかなぁ。RC Fパフォーマンスパッケージに乗った時、同じ仕様でも1台目と2台目では印象が違うことが多かったんです。

もちろん、重心も低く回頭性が良いのでクリップにはつきやすいし、エンジンパワーも気持ちいいのでどんどん踏んでいけるんですけど、ターンインで切っていったとき、1台目ではある程度Gがかかったところで急にトー変化が起こったような感覚があり、ソレがなんだか違和感ありありだったんです。

でも、2台目に乗った時には、その変な感覚は無し。もしかしたら1台目のクルマは内圧が上がっていなかったのかもですね」(井出)。

■タイヤは…ゴメンなさい

タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ4SをRC F専用に共同開発したとのことですが、どうでした?

「タイヤ? ボクが乗った時にはもう終わっていましたよ! アンダーが出ているのに無理やりコジってアクセル開けて…みたいな、いろんな方がいろんな乗り方で酷使したからだろうけど、ブロックもなんか壊れちゃっている感じ。だからゴメン、タイヤのインプレッションはどうこう言えないデス」(井出)。

正直でヨロシイです!

動画では語りきれなかったその先のインプレッションがここに(笑)!

次回【エアロでこんなに違う!(仮称)】では、RC Fのベース車とパフォーマンスパッケージで、見た目がまるで違うエアロチューンによる空力の違いはどうなのか?を熱く語ってくれましたヨ。

(試乗テスト:井出 有治/文:永光 やすの/動画:ウナ丼/画像:中野 幸次・角田 伸幸・永光 やすの)

※動画の中でいわゆる「引っぱり撮影」をしているRC Fパフォーマンスパッケージ(なぜか?左ハンドルの白ボディ)はドシャ降りの中ですが、井出さんの全開インプレッションは完全ドライ路面状態でのものです。

この記事の著者

永光やすの 近影

永光やすの

「ジェミニZZ/Rに乗る女」としてOPTION誌取材を受けたのをきっかけに、1987年より10年ほど編集部に在籍、Dai稲田の世話役となる。1992年式BNR32 GT-Rを購入後、「OPT女帝やすのGT-R日記」と題しステップアップ~ゴマメも含めレポート。
Rのローン終了後、フリーライターに転向。AMKREAD DRAGオフィシャルレポートや、頭文字D・湾岸MidNight・ナニワトモアレ等、講談社系車漫画のガイドブックを執筆。clicccarでは1981年から続くOPTION誌バックナンバーを紹介する「PlayBack the OPTION」、清水和夫・大井貴之・井出有治さんのアシスト等を担当。
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