目次
■空冷式と水冷式に大別できる
●近年はレイアウト自由度の高い水冷式が主流に
インタークーラーは、ターボチャージャーの圧縮によって上昇した吸気温度を低減する装置です。最近はディーゼルエンジンだけでなく、ガソリンエンジンでもターボを搭載するエンジンが増えており、インタークーラーの重要性が増しています。
インタークーラーの仕組みとメリットについて、解説していきます。
●なぜインタークーラーは必要か
ターボは、排出ガスの運動エネルギーでコンプレッサーを高速回転させて、エンジンに供給する吸入空気を圧縮(過給)します。
通常の無過給エンジンでは、1回の吸気行程では排気量分の吸気量しかシリンダー内に供給できません。過給すると排気量以上の吸気量が供給でき、出力が大幅に向上します。
吸入空気を過給(圧縮)すると、分子運動が活発になるため、吸気温度が上昇します。吸気温度が上昇すると、空気が膨張するため、密度が下がり、酸素量が下がることで出力が低下します。さらに、ガソリンエンジンでは、吸気温度が上がるとシリンダー内の最高圧縮温度も上がるため、自着火の異常燃焼であるノッキングが発生しやすくなります。
したがって、ほぼすべてのターボエンジンでは、吸気温度の上昇を抑制するため、ターボ下流に吸気を冷却するインタークーラーを搭載します。
●インタークーラーの仕組み
インタークーラーは、ラジエーターと同様フィン構造で構成される熱交換器です。放熱フィン構造や流れパターンの改良などで冷却効率を改善できますが、一方で冷却効率を向上させると吸気の圧力損失が大きくなります。冷却効率と圧力損失は、トレードオフの関係にあります。
冷却効率が向上すると出力向上につながりますが、一方で圧力損失が大きくなると出力低下とともにレスポンスの悪化を招きます。
●空冷式と水冷式の比較
インタークーラーには、空冷式と水冷式があります。
空冷式は、ラジエーターの前などにインタークーラーを配置して、走行風を使ってインタークーラーコアを冷却し、吸気温を下げる方法です。スバル・レヴォーグやメルセデスベンツ・Aクラスなどが採用しています。構造が簡単で低コストというメリットがあります。低速では十分に冷却できませんが、車速が上がれば上がるほど冷却性能が向上するので、スポーツ車やレース車に適しています。
ただし、コアに走行風を当てる必要があるため、搭載位置が限定されるというデメリットがあります。
水冷式は、空気に比べ熱容量の大きい水(エンジン冷却水)を使って冷却するので、走行風に頼らず搭載位置に自由度があり、低速でも冷却できるメリットがあります。トヨタ・C-HRやVW・ゴルフTSIなどが採用しています。
一方で、水配管などの部品が必要となりコストが高くなります。また、冷却水(約80℃)より低い温度に吸気温を下げることができないというデメリットがあります。
当初は空冷式インタークーラーが主流でしたが、レイアウトの自由度の高さから最近は水冷式インタークーラーの採用例が増えています。
また、エンジン冷却水を利用するのではなく、別体のラジエーターとポンプを搭載して、より小型化してレイアウトの自由度を向上させたインタークーラーシステムが登場しています。
●ディーゼルエンジンでは排出ガス低減にも貢献
本稿では、ガソリンターボエンジンについて解説しましたが、ディーゼルエンジンでもインタークーラー搭載によって、出力が向上するのは同様です。
さらに酸素量が増えることでスモーク排出量が減少し、燃焼温度が下がることによってNOx排出量が低減するなど、排出ガス性能が大幅に改善されるメリットがあります。
ディーゼル車だけでなく、ガソリン車にもターボ搭載車が増えている現在、インタークーラーなどの熱管理技術の重要性が高まっています。
(Mr.ソラン)