【スーパー耐久2019】パワーが無くても信頼性が武器!アクセラディーゼルがSUGO 3時間で2位の連続表彰台

●パワーの差が戦力の決定的差ではないということを教えてやる!?

4月28日にスポーツランドSUGOで行われたピレリスーパー耐久シリーズ2019第2戦「スーパー耐久SUGO3時間レース」のGr.1決勝。

ST-2クラスでGr.1唯一のディーゼルマシン・TEAM NOPROの17号車 DXLアラゴスタNOPROアクセラSKY-Dが、スバルWRX STIやランサーEVO Xを抑えて2位表彰台を飾りました。

スーパー耐久は1500CCのコンパクトカーからSUPER GTなどでも走るFIA-GT3マシンまで全8クラスが一斉に走ることで人気を博しています。予選では2リッタークラスのST-4と1500ccクラスのST-5をGr.2として、それ以外をGr.1とカテゴライズしそれぞれの予選を行います。コース幅の狭いスポーツランドSUGOと岡山国際サーキットでは8クラスすべてが一斉に走ると危険ということで、予選のクラス分けを決勝レースのクラス分けとしてGr.1レース、Gr.2レースの2レースに分け、それぞれ3時間の耐久レースが行われます。

そのGr.1のうち2リッターターボのFFもしくは4WDで競われるのがST-2クラス。アクセラディーゼルのライバルは前述のスバルWRX STIやランサーEVO Xとなり、カタログ値で約120~130馬力の差があります。

予選の順位は当然ながらかなりの後方。最後尾ではなかったものの、その一つ手前という位置です。

TEAM NOPROのアクセラディーゼル DXLアラゴスタNOPROアクセラSKY-Dの作戦は淡々とマイペースに周回を重ねること。まさに「ウサギと亀」作戦です。

マイペースといってもアクセラディーゼルにとってはかなりのハイペースで、昨シーズンよりはかなりタイムアップしている様子。それでもベストラップで見ればライバルよりも3秒遅い。傍から見ていれば一見勝負を捨てているかのように見えるこの作戦、実は耐久レースではかなりの効き目があります。

非力なこともあって規定の最低重量がライバルに比べて軽く、もともとの車重もライバルに比べて軽いことから無理な軽量化が必要なく、またライバルと違って駆動方式がFFであるため4WDよりもメカニカルトラブルの要因が少ないのも特徴。

参戦初年度でウィークポイントであったディーゼルターボの熱も対策のために設計されたバンパースポイラー、ボンネット、フロントフェンダーなどで解消されたことから「故障知らず」といえるほどの信頼性を持っているのです。

また燃費の良さを生かしてライバルと同等の航続距離を得るための燃料タンクも小さくて済むことから、ピットでの給油時間もライバルより短くなります。実際にどれだけ燃費がいいかといえば、3時間レースでは給油1回で済みそうな勢いで、第二スティントの走行周回がたったの3周というスティント攻勢を仕掛けてきます。

性能が高い方向で拮抗しているライバルは常にバトル状態でマシンに大きな負担がかかる中、ピット作業時間も含めた総合的な作戦で後方からじわじわと追い上げ、トラブルの少ない信頼性の高さで走り切る。ライバルがトラブルで沈む中、気が付けば上位にいるというのがアクセラディーゼルの作戦なのです。

この作戦は走行時間の長いレースであるほど有効となりますが、今回の舞台となったスポーツランドSUGOではコーナーの性質や少し荒い路面のためタイヤにかかる負担も大きいことからライバルのトラブル発生が多く、かなり有効な作戦となったのです。

開幕の鈴鹿5時間の3位に続いてのSUGO3時間での2位は、「速いマシンではなくても戦える」という耐久レースの醍醐味を教えてくれるものではないでしょうか。

次戦のピレリスーパー耐久シリーズ2019は富士SUPER TEC 24時間レース。ディーゼル勢の優勝も期待できる国内最長時間のレースとなります。

(写真・文:松永和浩)

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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