■1200ccもあるけどポジションはコンパクトで一体感が頼もしい
イギリスのバイクメーカー、トライアンフ。その中でも特にオーソドックスなスタイルを持つのがスピードツインだ。
丸型ヘッドライトにバーハンドル、ティアドロップ型のガソリンタンク、前後一体式のシートと「オートバイの王道」ともいえる普遍的なディテールではあるが、その中身は最新のもの。
トライアンフの伝統ともいえるバーチカルツイン(並列2気筒)エンジンには大きな空冷フィンがあるけど、実は水冷エンジン。ラジエターはエンジン前面に縦置きに配置し目立たないようにしている。さらにはキャブレターのような外観を持つフューエルインジェクション、3種類の走行モード、トラクションコントロールなど最新システムを備えている。
またがって最初に感じたのはポジションがコンパクトなこと。特に着座位置付近がギュッと絞り込まれていて足着き性がかなり良い。とても1200ccもあるバイクとは思えないサイズ感なのだ。といってもか弱さは感じられない。トレーニングして追い込んだアスリート体型とでも言えばよいだろうか、凝縮された頼もしさが伝わってくる。バーハンドルの幅は狭めで思ったより高くない。ライダーとの一体感も得やすいのである。
エンジンを始動すると左右出しのマフラーから太い排気音が響く。軽くブリッピングするとなめらかかつ力強く吹け上がる。好ましいのはレスポンススピード。いたずらに鋭すぎず、アクセルワークに比例する感覚が心地よい。
●驚くほどハイペースでワインディングを駆け抜けられる!
ギヤを入れてクラッチをつなぐと想像以上に強いトルクで車体が押し出される。試しにアクセルを大きめに開けてみるとグワァァァッと猛然とダッシュ。思わず「おぉっ!」と声が出てしまった。しかし先ほども触れたようにアクセルワークへの追従性が素直なので怖さはない。
そしてクルマの流れに乗りながら距離を稼ぐような走りも得意。ドコドコドコ……とツインエンジンの排気音を楽しみながらのクルージングは快適の一言。トルクフルなのでタンデム走行でも余裕がある。リヤシートも座りやすいしね。
わずかに速度を上げてからコーナーにアプローチしてみる。ここでは足まわりのしなやかさとダブルディスクブレーキのコントロール性の高さが光る。軽く沈み込む挙動を感じながらブレーキをリリース。そこから軽々とバンクしていく様はスポーティそのもの。切り返しもピタリと決まるので、ワインディングを意外なほどのハイペースで駆け抜けることもできる。
オーソドックスなスタイルに騙されてはいけない。これはかなりのポテンシャルを持つスポーツバイクだ。
1938年に登場した初代スピードツインは革命的なほどの走行性能を実現したモデルだという。その名を受け継いだ現代のスピードツインは、街角に停まっていたら「ちょっとオシャレなネイキッドバイク」という風情なのだが、実はかなり高いパフォーマンスを備えた『ギャップバイク』であることが体感できた。さすがトライアンフ!
【SPECIFICATIONS】
トライアンフ・スピードツイン
全長×全幅×全高(mm):- × 760 × 807
軸間距離(mm):1430
シート高(mm):807
車両重量(kg):196
エンジン種類:水冷並列2気筒SOHC
総排気量(cc):1200
最高出力(ps/rpm):97/6,750
最大トルク(Nm/rpm):112/4950
燃料タンク容量(L):21
トランスミッション:6速
ブレーキ(前・後):ダブルディスク・ディスク
タイヤ(前・後):120/70ZR17・160/60ZR17
車両価格:1,600,000円
(文:横田和彦/写真・動画:ウナ丼)