STIが2019年ニュルブルクリンク参戦マシンを公開シェイクダウン。富士スピードウェイで本気の走りを披露

【昨年の反省をふまえ、連覇を確実にするために牙を研いだNBR WRX】

2019年3月10日、富士スピードウェイにて「STI MOTORSPORT DAY」というイベントが開かれました。2018年にSTI(スバルテクニカインターナショナル)が創業30周年を迎えたことを記念して開催された、富士スピードウェイ本コースやパドックを使った大イベントでした。

多くのスバルファンが集まった「STI MOTORSPORT DAY」では、STIが走らせている2台のレーシングカー(GT300 BRZ、NBR WRX)の公開シェイクダウンが行なわれました。モータースポーツディというイベント名にふさわしいコンテンツです。

GT300というのは国内最高峰のツーリングカーレースといえるスーパーGTのGT300クラスに出場するマシン。NBRというのはドイツ・ニュルブルクリンクで行なわれている耐久レースに出場するマシンのこと。後者は6月22日〜23日に開催される24時間耐久イベントがメインターゲットです。

2018年の戦績はGT300では1勝をあげたものの悲願のシリーズ制覇はならず、それが2019年の目標。一方、NBRではクラス2連覇(通算6勝目)を目指してマシンを進化させています。そのため公開シェイクダウンには、NBRドライバーを務めるカルロ・ヴァンダム選手、ティム・シュリック選手も来日。もちろん、山内英輝選手、井口卓人選手というGT300とNBRの両マシンを操るドライバーも参加してのシェイクダウンとなりました。

公開シェイクダウンというからには、デモランのレベルではありません。それぞれのドライバーが2019年モデルにおける進化のほどを確認するべく本気走りでマシンを攻め立て、エンジニアとも熱くディスカッションしている様子を間近に見ることができました。

ここまで公開していいのだろうか? と思うかもしれませんが、それだけでは終わりません。なんとメディアやパートナー向けに2019年モデルにおける進化のポイントについても説明会が開かれました。まずはNBR WRXについて、進化の内容を紹介しましょう。

2019年 NBRWRXにおける主な技術的な進化のポイントは次のようになっています。

変速比のローギヤ化
変速比のステップ比の変更
クラッチ慣性マスの最適化(小倉クラッチ)
防水ECUの採用
予選用低フリクションエンジンオイル(モチュール)
スクラブ半径の見直し
パワステ配管の見直し
サイレンサーの強化(藤壺技研工業)
前後異形状ホイールの採用(BBS)
空気抵抗を減らすサメ肌塗装

一周する間だけで65回もシフトアップを行なうというニュルブルクリンクにおいて、シフトショックの低減とシフトアップ時の車速落ちを改善することは確実に結果につながります。そこでステップ比を最適化することで回転落ちを抑えたというのが最初の部分。あわせてローギアード化することで加速性能を従来以上に高めています。

シフトショックの低減には小倉クラッチ製の新型クラッチと高性能になった防水ECUが効いているといいます。クラッチのアッシー重量を軽量化(9.5kg→8.5kg)することで慣性マスを減らし、シフトショックの改善と耐久性向上を狙います。また、NBRマシンはパドルシフトを採用していますが、2019年モデルから採用する防水ECUの高性能化に伴い、エンジン・ミッション(パドルユニット)・センターデフの制御をひとつにまとめることが可能となり、ユニット間の通信遅れを改善しているということです。

なお、防水ECUを採用したのは2018年に雨がECUにかかってしまいエンジンストールを起こしてしまったというトラブルへの対策です。

パワステ配管の見直し、排気音を抑えるサイレンサーの強化のいずれも2018年でトラブルが起きた場所の改善。パワステ配管ではジョイント部位を削減することでトラブル発生の可能性を減らし、前年よりマイナス3dBとなったサイレンサーは万全を期して2種類を用意することでレース車検を十分にパスすることを目指します。

モチュールの低フリクションオイルは、予選限定で全回転域でパワーを向上させるもの。スクラブ半径の見直しというのはサスペンションジオメトリーなどの変更によりアンダーステア傾向を改善しようというものです。

ユニークなのは、ホイールの変更です。従来は軽量なマグネシウム製でしたが、あえてホイールのしなりによってタイヤの性能を引き出すというアイデアからBBS製の前後異形状ホイールを採用しています。アルミ製となっても一本あたりの重量増は約100gに抑えられているというのは、さすがです。

最後に2019年のチャレンジといえるのが、サメ肌塗装。表面をサメの肌のように処理することで空気抵抗を低減することが期待される新技術です。2019年のマシンではフロントフェンダー部分のルーバーやドアミラーにサメ肌塗装が施されています。

前後異形状ホイールやサメ肌塗装といったアイデアは、STIファンならば愛車でも真似したくなるカスタムといえそうです。その効果を実証するためにもニュルブルクリンク耐久での勝利に期待が高まります。

(写真提供:SUBARU 文:山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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