【着実な進化を遂げ、通算6勝目の勝利をめざすWRX】
2019年3月10日に初めて開催された「STI MOTORSPORT DAY」において、Super GT(GT300クラス)に参戦するBRZとともに、2019年のニュルブルクリンク24時間レースに参戦するWRX STI NBRマシンも披露されました。
2018年は5度目のクラス優勝を成し遂げたSTI。まず、パワーユニット関連では、シフトのローギヤ化によりブレーキングからの立ち上がりを改善し、カテゴリーが異なる車両などの追い越し時の加速性能向上が図られています。ステップ比の調整も図られていて、シフト時のエンジン回転数変化を抑えることで、シフトショックの低減によるドライバビリティの向上、タイムアップも実現できるとしています。
防水性が向上された防水ECUの採用もトピックス。水上バイクなどで使われている防水ECUにより、雨天時のエンジントラブル(エンジンストールやエンジンが再始動しないなど)を防ぐだけでなく、新ECUにより演算速度が約8倍も向上し、過渡応答や各種制御性が向上したそう。さらに、センターデフ、パドルユニットをECUに統合することで、2つのユニットを減らし、軽量化と協調制御により通信遅れの改善も図れるそうです。
ボディ、シャーシ関連も見直されています。2018年はフロントのジオメトリー変更により、結果的にタイヤへの負担増となったことから、2019年では、スクラブ半径の適正化により、タイヤへのダメージを抑制し、アンダーステア抑制、タイヤ温度の過度な上昇を抑制できるとのこと。
ホイールは、BBSの協力のもとマグネシウム製からアルミニウム製に変えることで、しなりを持ったしなやかさを手に入れることで接地面積を拡大。ピーキーな挙動も抑制できます。なお、剛性を確保しながら、軽量のマグネシウム製と比べても1本あたり100g増に抑えられています。
パワステにも手が入れられています。2018年のレース中にパワステの配管が外れたことで復旧に時間が掛かった反省から、信頼性の高い量産技術と品質を採用。さらにジョイント部位点数の削減でオイル漏れを起こさない高い品質を確保。
また排気系では、昨年、騒音規制に引っかかったこともあり、2019年はレースで当たり前の全開走行ができるように、最大3dB音圧を下げられるようになったほか、本番用と万が一のバックアップ(開発中)用の2本が用意されます。
見た目で大きいのが「鮫肌(さめはだ)塗装」と呼ばれる試み。小さな凹凸を作ることで車両の空気抵抗を減らせるのでは? という着眼がスタートだったそう。車両表面処理をマッド塗装としたことで、空気の剥離による小さな渦の発生を小さくし、空気抵抗低減を狙っています。
とくに、ドアミラーやフロント(フェンダー)ルーバーの凹凸が大きくされていて、風洞実験では、Cd値は変わらないものの、リヤウイングのダウンフォースの量が微少ながら増えていることが確認できたそう。2019年6月20日から23日までニュルブルクリンクで開催される24時間レース。2連覇、6勝目に向けて着実に開発が進められています。
(文/塚田勝弘 写真/塚田勝弘、STI)