【電動車両用バッテリーのサプライチェーンがもっとも整備されているのは日本かもしれない】
当連載でも2週間ほど前に歴代シビックTYPE Rを生み出してきたホンダのイギリス工場がなくなる!?ことについて話題としましたが、その後、国内外でホンダが電動化(ハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車、燃料電池車)を推し進めるということをアピールするようになっています。ジュネーブモーターショーでは、2025年までに欧州で販売するホンダ車の2/3を電動車両にするという計画を前倒しにして、四輪車のすべてを電動車両にすることを目指すという発表もありました。
その象徴として新しい電気自動車「Honda e」のプロトタイプを世界初公開しています。
また、ハイブリッドについては2モーター式の「スポーツハイブリッドi-MMD」を今後の主流にするとも発表。同じくジュネーブモーターショーでは市販モデルである「CR-Vハイブリッド」を展示してアピールしています。
2モーター式ハイブリッドは、プラグインハイブリッドに発展させやすいというのは、すでにホンダがクラリティPHEVで示している通り。そして、ハイブリッドよりプラグインハイブリッドが、プラグインハイブリッドより電気自動車のほうが多くのバッテリーを搭載する傾向にあります。
つまり、クルマの電動化を進めるには(現時点では)リチウムイオン電池を大量に必要とするわけです。日本ではハイブリッドカーの歴史も長く、大量生産されているのであまり課題とは思いませんが、自動車メーカーの中の人にうかがうと、電動車両の量産にはバッテリーのサプライチェーンを確保することが重要なテーマになるといいます。そのために、各社はバッテリーメーカーと協業したり、合弁会社を起こしたりして、バッテリーの確保に手を打っています。
じつは、ホンダがイギリス工場での完成車生産を休止するといった内容の発表をした際に、「欧州域内での電動車生産は競争力などの観点で難しいと判断」したという発言もありました。この発言からは、発電・駆動用の大型モーター、大量のリチウムイオン電池といった電動車両に欠かせない部品のサプライチェーンを構築することが難しいという意図が読み取れます。
逆にいえば、日本の生産環境というのは電動車両に対するサプライチェーンが整備されている状態といえます。日本市場はシュリンクする方向ですので、国内の生産工場はマザー工場的なポジションになるか、国内専用モデル(軽自動車など)に特化して効率よくものづくりを進めるといった方向で生き残りをかけるカタチになっていました。
しかし、欧州や中国で進む厳しい燃費規制に対応するためのクルマの電動化というトレンドが、日本の自動車生産におけるサプライチェーンの価値を相対的に浮上させているのかもしれません。長年のハイブリッドカーへの投資がグローバルで回収できるフェイズになってきたともいえそうです。
※初出時よりジュネーブモーターショーでの発表内容の表記について修正しました。
(山本晋也)