【自動車用語辞典:エンジン「ロータリーエンジン」】コンパクトで高出力だが燃費の悪さがデメリット

■環境性能が課題だが発電用として復活の可能性あり

●RX-8の終焉とともに一度は生産を終えたが…

ロータリーエンジンといえばマツダですが、燃費の悪さが致命的となり、現在は2012年のRX-8の終焉とともに搭載モデルは存在しません。2020年頃にレンジエクステンダーEV用エンジンとしてマツダから復活するという情報もある。ロータリーエンジンの構造やメリット、デメリットについて解説していきます。

●なぜロータリーエンジンは消えたのか

ロータリーエンジンはドイツ人の発明家ヴァンケルによって発案され、1964年NSU社のヴァンケルスパイダーに初めて搭載されました。しかし、オイル消費の増大やシール不良などの不具合が多発し、評価は得られませんでした。日本ではマツダが1967年にコスモスポーツに搭載し、以降2012年のRX-8の終焉まで多くのスポーツモデルで採用されました。

軽量コンパクトで高回転高トルクな特性がスポーツカーに向いており、熱烈なファンを獲得しました。一方で燃費の悪さもクローズアップされ、「ロータリーエンジンは燃費が悪い」というイメージも定着してしまいました。クルマ好きには魅力的なエンジンでしたが、燃費が悪いのは致命的で、残念ながら自然消滅してしまいました。

●ロータリーエンジンの作動原理

一般的なピストンエンジンでは、シリンダー内をピストンが2往復(エンジンが2回転)する間に「吸気」「圧縮」「燃焼」「排気行程」の4行程を行います。

ロータリーエンジンは、三角おむすび型のローターがトロイド曲線を持つ繭(まゆ)型のハウジング内部を独特な動きで回転します。回転とともに、ローターとハウジングで形成される燃焼室が移動しながら「吸気」「圧縮」「燃焼」「排気行程」の4行程を繰り返します。

ローター1回転で、通常エンジンのクランクシャフトに相当するエキセントリックシャフトが3回転するので、吸気、圧縮、燃焼、排気行程の4行程はエンジンで3回転(4ストロークエンジンでは2回転)に相当します。ローターには3辺(3つの燃焼室)があるので、結果として燃焼行程は1回転で1回発生します。2回転に1回の燃焼行程の4ストロークエンジンに対して、トルクは理論上2倍になります。

●ロータリーエンジンのメリットとデメリット

往復運動を回転運動に変える通常のエンジンに対して、ダイレクトに回転が引き出せるロータリーエンジンは、ある意味画期的なエンジンと言えます。4ストロークエンジンに対するメリットは、以下のとおりです。

・軽量コンパクト
ピストンや動弁系(吸排気弁など)が不要なため、その分コンパクトで軽量です。また、動弁系にかかわる部品がないため、関連するフリクションがありません

・低振動/低騒音
ピストンの往復運動がないので騒音振動に優れています

・高出力
1回転中に燃焼が1回発生するので4ストロークエンジンに対して同じ排気量で出力は理論上2倍になります。また、トルク変動と回転変動が抑えられ、回転がスムーズです

一方で、重大なデメリットがあります。

・燃費が悪い①(燃焼効果)
吸排気弁がないため、吸排気効率が悪く、また混合気の流動が小さいため、不完全燃焼になりやすく、燃焼の効率が低いです

・燃費が悪い②(熱効率)
SV(燃焼室表面積/容積)比が大きい燃焼室形状のため、熱損失が大きく、熱効率が低いです

・排気音が大きい
排気弁がなく、一気に燃焼ガスが排出されるため、排気音が大きくなります

・エンジンオイルの消費量が多い
ローターハウジング内にも潤滑オイルが必要で、燃料とともにオイルも一緒に燃焼するため、オイル消費が大きくなります


ロータリーエンジンで今後さらに厳しくなる燃費規制と排出ガス規制をクリアすることは非常に厳しいというのが、一般的な見解です。

一方で、2020年頃にマツダのロータリーエンジンが、レンジエクステンダーEV用エンジンで復活するという情報があります。発電用エンジンであれば、コンパクトで軽量という扱いやすいロータリーエンジンの特徴が生かせるかもしれません。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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