電動と4WDの組み合わせと緻密な駆動力の制御は雪道での安心感をもたらす。フォレスターで肘折温泉から庄内空港へ【スバル雪上試乗会・その3】

●アイサイトのオートクルーズコントロールは雪道での走行にも使える

山形県で行われたスバルの雪上試乗会では、なぜスバル車が寒冷地で高い評価を受けているか? を探りました。肘折温泉で前半のレガシィアウトバックからフォレスターに乗り換え、庄内空港を目指します。

レガシィアウトバックで乗り換え地点に到着した我々は当初、XVを割り当てられました。しかし、3名分のトランク、動画と静止画の機材一式を積んでみるとちょっときつめ、そこでフォレスターへと変更しました。

XVのラゲッジ容量は385リットル、フォレスターはピュアエンジンモデルで520リットル、試乗したハイブリッド仕様となるアドバンスでも509リットルを有します。ボディサイズそのものが大きく異なりが、たくさんのプレイアイテムを積み込んで出かけることを前提とするならフォレスターの大容量ラゲッジは魅力にあふれています。

試乗車のグレードはアドバンス。アドバンスは2リットルエンジンにモーターを組み合わせた「 e-BOXER」と呼ばれるハイブリッド式。エンジンは145馬力・188Nm、モーターは13.6馬力・65Nmと、モーター出力はさほど強くなくマイルドハイブリッドであることがわかります。ただ、多くのマイルドハイブリッドがアシストのみなのに対し、eボクサーはEV走行も可能にしています。

スバルの4WDシステムは左右対象となる「シンメトリカルAWD」と呼ばれます。eボクサーではモーターをミッション後方に配置、バッテリーはリヤシート後方の低い位置に搭載し、シンメトリカルAWDを実現しています。発進はモーターを基本としていますので、力強いものとなります。そして、ただ力強いだけではなく、モーターならではの緻密なコントロールが働くことで、スムーズな発進が可能になります。電動と4WDの組み合わせは雪などの滑りやすい路面では、かなり有利な状況となるのです。

減速時は回生ブレーキが使えることもあり、滑りやすい路面ではフットブレーキのみに頼るよりも楽な減速が可能です。この部分もAWDと電動技術の組み合わせがなせるワザです。ですが弱点もあります。今回はそうした状況にはなりませんでしたが、バッテリーが満充電の場合は回生させたエネルギーを捨てる必要が出てきますので、効率は悪くなってしまいます。

数あるスバル車の魅力のなかで、多くのユーザーが認め、そしてその機能が欲しくてスバル車を選んでいるのが「アイサイト」です。アイサイトは自動ブレーキなどを含む総合的な装置ですが、なかなか経験しない自動ブレーキと違い、ACC(オートクルーズコントロール)は数多くの人が享受できる機能です。フォレスターのACCには、「ECO-C」というモードが加わりました。

スバルの追従機構は、全車が加速して離れていった際や車線変更してクリアになったときに、設定速度までできるだけ早く復帰しようというセッティングです。これは今も変わらないのですが「ECO-C」モードにしていると、加速がゆっくりと行われます。ゆったりとしたツーリングドライブ時に重宝する機能ですが、雪の高速道路でも加速がゆっくりとなるため安心感が増加します。もちろん、通常の加速をしても安定はしていますが、気持ちの上での安心感はこちらのほうが高くなります。

(文・諸星陽一/写真・前田恵介)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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