●ホンダが二輪と四輪の生産・開発体制を大変革
青天の霹靂というほどではありませんが、2月19日にホンダが「事業運営体制変更に関する」会見を実施しました。事実上、緊急記者会見といえるもので、そこでは『急速な事業環境の変化を踏まえ、二輪車・四輪車・パワープロダクツの各領域で運営体制の変更』が発表されました。
まず二輪部門については、二輪事業本部と二輪R&Dセンターを組織として一体化するということが発表されました。ホンダは開発部門を別会社・別組織としているのが特徴ですが、そうした体勢を変えることで、スピードを上げていくことを目指しています。
こうした動きはすでに『SEDB<営業(Sales)・生産(Engineering)・開発(Development)・購買(Buying)>』の一体化といって、二輪や軽自動車の商品開発においては実現されていますが、組織も一体とすることで、さらなるスピードアップを目指すというわけです。
四輪においても、こうしたスピーディな判断ができる環境への進化が求められます。そのため、開発を担う本田技術研究所の社長交代、商品開発を担う「オートモービルセンター」の新設といった変革が発表されています。
●歴史あるイギリス工場での完成車生産を終了
そして、注目なのはグローバルにおける生産体制の変更です。現在、シビックハッチバック(TYPE Rを含む)を生産しているイギリスの四輪車生産工場であるHonda of the UK Manufacturing Ltd.における完成車生産を終了する方向に決定。労使間での協議を開始したといいます。次期シビックからはメインマーケットである北米ほかの地域で生産するということです。
記者会見で、ホンダの八郷隆弘 代表取締役社長は『ブレグジット(イギリスがEUから脱退すること)が、今回の判断に与えた影響はない』ということを強調していましたが、一方で日本とEU間のEPA(経済連携協定)が発効したことで将来的には日本からEUへの輸出する際の関税が撤廃されるという状況を考えると、まったく影響はないと考えるのは無理があります。
とはいえ、ブレグジットだけの問題ではなく、そもそもイギリスの工場は稼働率などから対策が課題であったという話もあり、まさしく次期シビックの生産体制の決定や、労使交渉の開始などのタイミングから今が発表の最適なタイミングとなったといえそうです。
イギリス・スウィンドンにある四輪生産工場といえば歴代のシビックTYPE Rを生み出してきたファクトリーでもあります。日本市場でいえば2代目シビックTYPE R(EP3)、シビックTYPE Rユーロ(FN2)、ターボになったシビックTYPE R(FK2)、そしてニュルブルクリンクFF最速を誇る現行モデルのシビックTYPE R(FK8)のいずれも、このイギリス・スウィンドンの工場で生み出されてきました。
その伝統が、次期シビックでは途絶えてしまうというわけです。思えば、日本産のシビックTYPE R(EK9、FD2)を生産していた鈴鹿製作所も、いまは軽自動車「Nシリーズ」とフィット、シャトルといったコンパクトカーを生産するようになっています。
Honda of the UK Manufacturing Ltd.における完成車生産が終了することで、シビックTYPE Rの歴史における節目となりそうです。それが「ピリオド」になるのか「カンマ」になるのかは現時点では不明ですが、次期シビックにもTYPE Rが存在することをホンダファンは期待しているのではないでしょうか。
次期シビックTYPE Rを、どこで生産するのかはホンダのブランディングにおいて重要なファクターとなりそうです。
(山本晋也)