日本未発売、欧州だけで売っている横浜ゴムのオールシーズンタイヤ「ブルーアース4S AW21」は大注目間違いなし!!

●分かって使えば便利なタイヤ・横浜ゴムのオールシーズンタイヤを試す

2019年初頭の横浜ゴムウインター試乗会が北海道にある同社のテストコースで開催されました。近年、日本でも注目度が高くなっているオールシーズンタイヤですが、横浜ゴムはまだ販売されていません。しかし、欧州ではすでに販売され、その認知度も高いものとなっています。

今回はそんなオールシーズンをテストコースで試乗しました。

欧州で販売されているオールシーズンタイヤは2018年3月のジュネーブモーターショーで発表された「ブルーアース4S AW21」と呼ばれるモデルです発表時の資料によれば、14インチから19インチまで30サイズ以上がラインアップされ、今後もそのサイズは拡大されるとなっています。

「ブルーアース4S AW21」は回転方向を持つV字型のトレッドパターンを採用、シリカエンドロックポリマーコンパウンドと呼ばれるゴムを採用することで、ウエットから雪まで広い路面状況でのグリップを確保しています。ASTM(米国材料試験協会)認定によるスノーフレークマークも授与、TUV SUD(ドイツに本社のある第三者認証機関)にも認証され、そのウインター性能も認められています。

試乗車として用意されたのはマツダcx-5とプリウス4WDです。比較用として最新のスタッドレスタイヤ「アイスガード6」を履いたマツダcx-5&プリウス4WDも用意されました。

試乗コースは圧雪路面のハンドリングコースと室内氷盤路の2ステージでした。まずは圧雪ハンドリングコースでCX-5Wを使っての試乗です。静止状態からのスタート、加速、ブレーキではアイスガード6の9割程度の性能、コーナリングでは8割程度の性能というイメージです。しかし、発進できないわけでもなければ、ブレーキで止まらないわけでもありません。どちらかと言えば横方向が弱いのですが、それらを理解すれば十分に走れます。

プリウス4WDを使い氷盤路でブレーキとスラロームを試すと、さらに性能がダウンし前後で8割程度、横方向で7割程度といった印象です。

単純にグリップ性能だけを考えれば、10年前のスタッドレスタイヤくらいの性能はあるという印象です。そのころの最新のスタッドレスタイヤには「すごい」と感じたのですから、今でもある程度の性能は備えていると考えていいでしょう。冬は必ず雪が降り、圧雪路や氷雪路となる北海道や東北ではスタッドレスタイヤを使うのが基本で、オールシーズンタイヤは避けたほうがいいでしょう。また、スキー場へ行くために冬タイヤが欲しい人もスタッドレスタイヤを選んだほうが賢明です。

オールシーズンタイヤを使えるのはごく限られた地域です。東京都内のように雪が降ってしまったときにクルマで出かけたいという人たちにとって役立つのタイヤと言えます。ただし、都内といっても坂道やスロープが凍るような地域ではオールシーズンタイヤは使いづらい面があるでしょう。そうした場面に出くわした際にはタイヤチェーンは必需品です。使うことを前提としてなくても、タイヤチェーンの携行は必要ですし、凍った坂道では使う可能性も高いでしょう。

怖いのはオールシーズンタイヤをスタッドレスタイヤと同じように使えると勘違いしてしまうこと。そして、勘違いしたことによって起きた事故と、その事故を起因とする風評被害でしょう。

オールシーズンタイヤはきちんと理解して使わないとならないタイヤです。そして、分かって使うと、とても使いやすいタイヤなのです。

今後、オールシーズンタイヤの市場は拡大していくことでしょう。横浜ゴムの「ブルーアース4S AW21」は、そうしたなかで大注目となること間違いなしな予感がします。欧州だけで売っているのではなく、そろそろ国内投入を考えていいのではないでしょうか。

(文/諸星陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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