大クラッシュで話題となったマカオグランプリって、どんなレース?

国内でも10月に鈴鹿サーキットで初めて開催されたWTCR世界ツーリングカーカップ。その最終戦がマカオグランプリで開催されました。

2リッタークラスのツーリングカーをTCR規定でモディファイしレーシングカーとして市販したものを使って競われるWTCR。昨年まではWTCC世界ツーリングカー選手権として同様のレースは行われていましたが、あまりにも高度化しすぎてしまったために参戦への難易度が高くなりエントリー台数を減らしてしまった一方、その下のクラスとして人気が高まり地域戦でエントリーを伸ばしてきたTCR規定のマシンによって世界を転戦するシリーズが今年からWTCR世界ツーリングカーカップとして設定されました。

その魅力はなんといっても接近戦。性能が拮抗しているために常に繰り広げられるドッグファイトが観客を魅了します。

ホンダシビックやフォルクスワーゲンゴルフなど参加するマシンも比較的身近でワールドワイドな車種が多く、感情移入しやすいところも魅力の一端でしょう。

アウディRS3やプジョー308も出場しています。

2015年にSUPER GTのGT300クラスでチャンピオンとなったマカオ出身のアンドレ・クート選手はマカオではヒーロー的存在で、ここ数年のマカオグランプリにおいて必ずなにかのカテゴリーに出場しますが、今回はWTCRにスポット参戦していました。

マカオグランプリをこよなく愛することでマカオや香港、そしてアジア圏でも人気の高いロブ・ハフ選手は「他のグランプリで優勝してチャンピオンを獲ったとしてもマカオを走らなければ真のチャンピオンとは言えない」とまで言い切ります。

また「マカオは非常に難しい。そして運にも左右されるタフな場所。だからこそマカオを走ることができるのは誇り高いことなんだ」とも言います。

そのロブ・ハフ選手は2回行われたWTCRの予選の両方でポールポジションを得ています。予選2回の内訳はの1回目の予選は3回行われる決勝レースのレース1のスターティンググリッド、2回目の予選はレース3のグリッドを決定し、レース2はレース3のグリッド上位10台を逆に配置するリバースグリッドとなります。つまり予選2回目の10位がレース2のポールポジションとなるのです。

激しい接近戦や多重クラッシュなどの難関を乗り越えての優勝はロブ・ハフ選手の言うように誇り高いものであるといえるでしょう。その優勝者、レース1はアウディRS3 LMSのジャン・カール・ベルネイ選手、レース2も同じくアウディのフレデリック・バービッシュ選手で、アウディが強さを見せました。

そしてWTCRのメインイベントともいえるレース3に優勝したのは、ホンダCIVIC TYPE-R TCRのエステバン・グエリエリ選手。絶妙なスタートでロブ・ハフ選手の前に出ると終始ハフ選手とのドッグファイトを展開しながら巧みに押さえ込みながらの優勝はお見事!

そして今年から始まったWTCR世界ツーリングカーカップの初代チャンピオンに輝いたのはヒュンダイi30N TCRのガブリエル・タルキーニ選手。シリーズ2位のイヴァン・ミューラー選手と3ポイント差でのチャンピオン獲得ということで、WTCRが如何に拮抗した戦いであるかがお解かりいただけるかと思います。

クラッシュばかりが大きく取りざたされるマカオグランプリですが、3枚看板となる世界戦を軸に伝統に裏打ちされたレースイベントとして世界中から注目され、また地元マカオの人々からも愛されているからこそ主要幹線道路を封鎖してのレースが65回も行われているのです。それこそマカオという都市が一体となって繰り広げるお祭りのようなもの。世界に唯一の存在として人々を魅了しているのです。

(写真・文:松永和浩)

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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