すっかり秋らしくなって、オープンカーで走るのがとても心地よい季節になってきました。すこし肌寒いくらいがオープンカーにとってちょうど良い気温です。オープンにしてもサイドウィンドーをあげておけば、ロードスターなら風の出入りは少ないので、クルマの中はほっこりあたたか。もっと寒くなるのなら、暖房を入れてしまえば、実は冬でも十分オープンを楽しめます。
ロードスターの車内には風があまり吹き込んできませんが、その代わり強く入り込んでくるものがあります。それは、外の世界の香り。いろんな香りを吸い込むたびに、ロードスターは中でもなく外でもない、境界線のないクルマだなぁと感じます。
私が田舎育ちだからかもしれませんが、季節の移り変わりはいつも空気のにおいで感じます。いまのような季節になると一番うれしいのが、キンモクセイのなんともいえない優しく甘い香りです。もちろんそれはロードスターに乗っていても十分に感じられます。どこからか金色のキンモクセイの香りがしてきて、胸いっぱいにその空気を吸い込むときのえも言われぬ幸せな気持ち……。それがさらに好きなクルマでドライブしているときであれば、もっとその幸せが膨らみます。
とは言っても、キンモクセイの時期はあっという間。ほかに楽しめるものはないの?という方もいるのではないでしょうか。田舎であればほかにも季節ごとに自然のにおいを感じる瞬間はよくあります。たとえば、春の土のにおいや夏の夜のにおい、秋は田んぼで籾殻を焼くにおい、冬は雪が降るときのにおい……。ただ、残念ながら、都心に近いところに住むようになってからは、そんな自然のにおいを感じる機会は少なくなったように思います。
でも、都心や街でもロードスターと出会える素敵な自然の香り、実はあるんです。普通の自然というよりはちょっと飛び道具的なものかもしれませんが……。みなさん「チップ運搬車」という紙の原料になる木のチップを運ぶ大きなトラックをご存知でしょうか?ロードスターに乗っているとどこからか木の香りが漂ってきて、探してみると近くにそのチップ運搬車がいることがあります。これがキンモクセイに勝るとも劣らないとっても良い香りなのです。ついついその香りに誘われて、しばらくその後ろを追いかけてしまうことも。
また、香りとは関係ありませんが、大きな銀色のタンクのトラックも会えると嬉しいクルマのひとつですよね。自分の愛車が走っている様子がそのタンクに映り込むので、ついついこちらも後をついて行ってしまいます。ただ、チップ運搬車は、銀色タンクのトラックよりかなり遭遇率は低め。ロードスターに乗っているときに木の良い香りがしてきたら、是非逃さないように探してみてください!
(伊藤 梓)