今回の試乗では、世界初を謳う従来の「Gベクタリング コントロール(GVC)」と「GVCプラス」を同一車両で繰り返し(オン/オフ)テストする機会がありました。
さらに、同技術を担当する車両開発本部 操安性能開発部 主幹の梅津大輔氏の技術プレゼンもありましたので、どんな技術かご紹介します。
「GVC」を簡単におさらいすると、エンジントルク制御によりシャーシ性能を高める技術。ステアリング操作に応じてエンジントルクを少し絞ることで前荷重にして、四輪の荷重を旋回状態に応じて最適化にすることで、シャーシ性能を高めるというもの。
非常に微細なエンジン(アクセル)コントロールをしてくれることになりますので、「GVC」の効果に気がつかないということもあり得るわけです。
「GVC」が世界初を謳っているのは、前後を同時に制御している点。横向き(横運動)のステアリング操作に対して、前後運動であるエンジンを制御することで、全体の運動性能を制御。ターンイン時の接地感が高まり、フロントの接地感が向上し、安定性が高まるのが特徴です。
前後運動、横運動の制御に対して、世界から高く評価されているそうで、「SKYACTIVE」世代のエンジンになって初めて実用化。梅津氏によると「GVC」はデミオEVでの開発で先行していたそう。
CX-5・CX-8に新たに搭載された「GVCプラス」という制御は、エンジンGVCに加えてブレーキにより直接ヨーモーメント制御を追加することで、車両挙動を安定化させる技術。
「GVCプラス」は、ブレーキをつまんでヨーを制御するヨーモーメント制御の一種で、一般的なトルクベクタリングと狙いどころは似ているそう。ただし、「GVCプラス」のキモはヨーだけでなくピッチングも制御している点で、曲げるために行っているトルクベクタリングと真逆の制御になります。なお、「GVCプラス」はステアリング操作のみに反応。
「GVC」によりステアリングを操舵すると、車両の安定性が増します。そこから、ステアリングを戻す時にブレーキ制御により素早く直進状態にさせるのが「GVCプラス」の効果。この組み合わせが「GVCプラス」ということになります。
コーナーでの動きは、「GVC」によりターンイン時にエンジントルク制御により前荷重になり、応答性が改善。さらに定常旋回に入った瞬間にエンジントルクを戻し、リヤ荷重に移行させます。
そこから先が「GVCプラス」の出番で、ステアリングの戻しの速度に応じてヨーモーメントを与え、旋回をやめる(直進状態に戻す)モーメントを与えることで、オーバーステアを抑制したり、挙動の収束性を高めたりすることができます。
旋回中から少しでもステアリングを戻す操作をすると(操舵速度に応じて)、フロント外輪のブレーキをわずかにつまみ、戻すモーメントを与えることになります。
「GVCプラス」の効果は、前後Gと横Gのつながりがよりスムーズになり、ドライバーや乗員はピッチとロールのつながりがスムーズになることで、車両の安定性向上を享受できるようになります。
テストコースで「GVCのみ」「GVCプラスあり」を試すと、素早くステアリング操作をしたり、舵角が大きくあったりした際により差が分かる印象。より安心感が高まる技術といえます。
(文/塚田勝弘 写真/塚田勝弘、小林和久)