【ノートe-POWERが売れた理由を考えてみた・後編】ノートにはネガティブ要素を打ち消す「何か」がある!

元某メーカーのシャシーエンジニアの筆者による、ノートe-POWERの試乗レビュー。前編では筆者がよく感じた点を挙げました。読んでいただいた方は「忖度しないって言ったじゃないか!」って思っておられるかもしれませんが、後編では気になる点を挙げていきます。

【気になる点①】一向に減らない航続距離表示

ガソリン満タン状態のノートに乗り込むと、メーターの中央には航続可能距離650kmとの大きな表示。直前に乗っていたのがリーフでしたので、この航続可能距離を見て安心感を覚えました。ところが100km程度試乗後、ガソリンメーターは、なんと1メモリも減らず、また航続可能距離の表示はむしろ増えて「690km」に。

アクセル操作のやり方で航続可能距離が延びることはよくありますが、ガソリンが減らない(ように見えた)のは、不思議な感覚でした。最終的に200km強を走行し、ガソリンメーターは2メモリ減って、航続可能距離の表示は680km、ガソリン消費は8Lでしたので、今回の実燃費は25km/Lとなりました。

カタログ燃費は34.0km/L(JC08)ですので約25%の乖離。とはいえ、この燃費の良さは本当に驚きます。

【あと一歩の点①】絶えず聞こえるエンジンの唸り音

標準のノートに対してエンジンがある前方とキャビンの間への遮音対策がなされてはいるのですが、走行中、10分に一度くらいならまだしも、1分に一度くらい「ガーガー」と芝刈り機のごとくエンジンが発電する音が聞こえてくるのは、質感の面で非常に残念です。

上位グレードの「MEDALIST」では側方のドアなどにも遮音材対策もしているとのこと。メーカーも「うるさい」のは承知の上、コストカットのために遮音対策を削るといった、割り切った開発をしたものです。

我々の様なライターが試乗するクルマは、上位グレードの「MEDALIST」が多いため、試乗レビューに「ノイズは許容範囲」と書いてくれるのを期待しているのかもしれません。カタログにある「走行時の騒音基準が2クラス上、※e-POWER MEDALISTのみ」の表示、小さすぎはしませんか?

【あと一歩の点②】段差乗り越し時のノイズとヒョコつく乗り心地

路面の段差やつなぎ目を超える際に聞こえる、「ダンッ」「ドタンッ」という音が、少し大きく感じました。乗り越し時のショックの強さは、サスペンションが吸収しているため、上下の加速Gは少なく感じますが、段差インパクト時のノイズが聞こえることで、クルマの質感を損ねている、と感じました。

また、きびきびしたハンドリングを優先したのか、一人乗りの場合、ボディが上下にヒョコつくシーンがありました。「ボディの余計な上下のフワ付きを抑制している」と言い換えて表現することもできますが「しっとりと路面の起伏をいなして滑らかに進んでいく」より質感の高い乗り心地を、期待したいところです。

ノートe-POWERの長所は、「走り」と「燃費」です。クルマに興味がない人でも試乗すれば、ガソリン車との違いに「あれ?何かが違う!」と驚き、驚異の燃費で「感動」をして、購入後には「買ってよかった」と満足するのではないかと感じます。

クルマを作る側のエンジニアの視点でレビューをすると、良く見えない点が多々見つかりますが、良いクルマの本質は「お客様が喜んでくれるクルマ」です。良く見えない点を覆いつくす「圧倒的な何か」がこのノートe-POWERにあるのだと思います。現時点では、選んで間違いのない「推し」の一台です。

(文/写真:吉川賢一)

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
続きを見る
閉じる