「自動運転」に欠かせないもの…それが人間のドライバーと同じように現状を把握し、これまでの経験から状況を予測してクルマに指令を与える「AI」=人工知能や「GPU」の搭載であり、その性能次第と言っても過言ではないと思います。むしろAIによって人間よりも反応が早く、かつ安全な運転が可能になります。
クルマの心臓は「エンジン」。ではクルマの頭脳は「AI」?
とはいえ、現実にはそう簡単なことではありません。そしてそのカギを握るのがアメリカの半導体メーカー「NVIDIA」(エヌヴィディア)の存在。「NVIDIA」は、もともとはゲームのグラフィック画像処理用のボードを開発している会社で、そのシェアはゲーム市場の約9割を占めています。しかし現在はゲームの世界に留まらず、IT産業、スーパーコンピュータにもNVIDIAの「GPU」が使用され、今年6月にドイツ・フランクフルトで開催された国際スーパーコンピューティング会議(ISC)では世界最速スーパーコンピュータのトップはもちろん、トップ10のうち1位、3位、5位、6位、7位の5台にNVIDIAのGPUが搭載されています。
ちなみに「GPU」とは「Graphics Prpcessing Unit(グラフィック・プロセッシング・ユニット)」の略で、高速で画像処理を行うもののこと。これによってリアルタイムで同時に多くの画像処理が可能です。
一方「CPU」は、「Central Processing Unit(セントラル・プロセッシング・ユニット)」の略で、PC全体を管理するもの。GPUとの違いは、こちらはひとつひとつ順番に処理していくという違いがあります。
NVIDIAでは自動運転のためにAI(人工知能)にコンピュータ「GPU」を組み合わせて、膨大なデータを記憶させ、学習させます(ディープラーニング)。
情報収集→学習→シミュレーション→運転。この作業がシームレスにつながらなければ自動運転は成り立ちません。そしてこの作業は簡単なものではありません。
そして現在、「NVIDIA DRIVE」を使って、370以上のパートナー企業が自動運転の開発を行っているとか。つまり…ほとんどの自動車関連会社が『 NVIDIAファミリー 』。
その中のひとつ、トヨタとNVIDIAは世界初の自動運転用プロセッサ「XAVIER(エグゼヴィア)」を共同で開発中。「XAVIER」は毎秒30兆回のディープラーニング演算を行い、自動運転に必要な状況判断を行います。しかもこれをわずか30w/秒の消費電力で処理をするとのこと。しかも驚くのは、その大きさは手のひらサイズなのです。
そしてダイムラー×ボッシュもNVIDIAと協業し、3社それぞれの強みを生かしながらNVIDIAのAIスーパーコンピュータ「Pegasus(ペガサス)」を搭載する、ドライバーがいない完全自動運転車「ロボットタクシー」の実現を目指しています。これは、高解像度のカメラや、ライダー、レーダーなどのセンサーなどによって色の識別から距離の測定、周囲の動きなどを検知し、それらを組み合わせ、膨大な情報を計算機上から予測してリアルタイムに解釈、処理をして目の前のシチューエーションに対応していくというものです。この「ペガサス」には、AIや画像処理を目的とした2個の「NVIDIA Xavier SoC」と2個の次世代「NVIDIA GPU」が搭載されているそうです。
そんなNVIDIAとパートナー企業の開発者、専門家による新製品や取り組みのプレゼンテーション「GTCジャパン2018」が9月12日(木)・13日(金)の2日間、東京・品川の新高輪グランドプリンスホテルにて開催されました。
まずはNVIDIAの創設者Jensen Huang(ジェンスン・ファン)CEOによる基調講演。約3000名が着席で聴講可能な同ホテルでもひときわ大きな会場で行われました。しかも、この会場はすぐに満席となってしまい、用意されていたサテライト会場もすぐに満席に。
講演のテーマは、コンピュータグラフィックス、ハイパフォーマンスコンピューティング、自律可能なマシン・ロボティクスの3つ。
今年1月にアメリカのCESでも発表された自律するロボットに搭載される「XAVIER(エグゼヴィア)」の紹介、次にエグゼヴィアにAIを組み込んだ「NVIDIA AGX」。
そして自動運転車を開発するための車載用コンピュータ「DRIVE GX XAVIER」。これは無線でアップデートが可能とのこと。
「GTCジャパン」の会場ではほかに、自動運転をはじめ医療など9つの会場でプレゼンテーションが行われましたが、私が参加したのは金沢大学・菅沼直樹氏「市街地の自動運転におけるAIの果たす役割と未来」、SUBARU小山哉氏「SUBARU将来の自動運転と知能化技術の取り組みについて」、NVIDIA馬路徹氏「自動運転車からサポート・クラウドまでのトータル・システム」など。
自動運転の実現やクルマの進歩、技術の進歩にはNVIDIAの技術が必要不可欠になっていることを実感しました。それにしてもこの分野は専門用語が多く、なかなか理解するのが難しい…。
そして、コンファレンス会場は室内が冷えすぎで寒すぎでした。理由は、ジェンスン・ファンCEOのトレードマークである黒の革ジャンを着ているためとか。…室内は寒くても、参加者の目は真剣。というかむしろ室内が冷えていることで、参加者の頭がフル稼働できるようにという配慮なのかも。ジェンスン氏とテクノロジーは暑さが苦手なのかもしれません。
(吉田 由美)