L型シングルターボはコスパ最高! エスプリ130Zのメカニズム・チェック!・その5【OPTION 1985年8月号より】

シングルターボ仕様の強みは、なんといってもタービンが1個で良いこと(当たり前だけど)。それに伴ってEXマニ含めコストパフォーマンスはもちろん、軽量化にもつながります。そんなことから開発されているエスプリ130Zのメカニズムをチェックしてみましょう!

・・・・・・・・・・・・

コストパフォーマンス抜群のハイパワー!
エスプリ・フェアレディ130Zターボ

今回の谷田部最高速で284.58km/hをマークしたわけだが、このシングルターボの記録はRSヤマモトの290.32km/hに次いで2番め。

実はツインターボ全盛期に敢えてシングルでトライしているのは、コスト面において安く済むからだ。つまり、三菱製TD08タービンは1基33万円(※当時)だが、ツインのギャレットT04タービン辺りだとタービンのみでも50万円近くかかるし、EXマニなどもシングルに比べ割高になってしまう。

この辺りを考えてエスプリでは、安い費用で速いクルマをお客にフィードバックできるようにテスト&トライしている、最高出力は450ps、リッターあたり150psと強力だ。そのため強度、剛性、耐熱性などが各パーツに要求される。

ブロックは89mmにボーリング後、ピストンリングのなじみ性の面からホーニング処理がされ、ブロック内外面の鋳バリやR取りを施してある。クランクはL28ノーマルのストローク79mmで、強度アップのためタフトライド処理がされ、それによるユガミや曲がりを修正するためダイナミックバランス処理が施してある。

ピストンはHKSの89mm鍛造。高過給圧でも安心できるピストンだ。むろん6気筒分の重量バランスが図られている。コンロッドはL28ノーマル品。これを強度アップのため軸部の両側端が表面研磨される。もちろん高回転、高負荷に対処してフルフローティング方式だ。

次にシリンダーヘッド。燃焼室形状や各容積合わせ、表面研磨などはエスプリのノウハウが施される。ポートはインマニに合わせて拡大し、吸排気の流れをスムーズにするため研磨済み。これにHKSの作用角76度のカム、東名製ビッグバルブを組み込む。

吸気システムはOER50φでメイン230番、エアジェットは180番を使用。これにオリジナルのサージタンクがドッキングされている。そして3本のインジェクター(320cc/分)がプラスされ、ブースト0.8kg/cm2で1本、1.2kg/cm2で2本が噴射する。

次回はもう一度、各部のパーツを煮詰め直してチャレンジする。まずサージタンクの改良。詳細は秘密だが、より高速タイプにして、EXマニをステンレス製タコ足タイプに変更。サスペンション、空力をもう一度煮詰めるというから楽しみだ。

街乗り仕様にも乗ったゾ!

「街乘り用にデ・チューンしときました!」と言われても、谷田部とストリート試乗とは緊張度が違う。300psでもバカッ速いのだ。低中速が乗りやすいように口径の小さいキャブにしてあるが、それでも2000rpm以下は使えない。

クラッチもつなぎが難しい。B&Bが装着されているが、ターボチューンには不可欠でもある。強烈なトルクがかかるからだ。エンジンの吹けはいい。高速道ではあっという間に250km/hの実力。キョービのフルチューンは恐い!

・・・・・・・・・・・・

最高速に狙いを定め、エンジン内部もフルチューンが施されているL28改3L。エスプリ・チューンの「走る実験室」を覗き見した気分ですよね。この130Zも後々、OPT誌上に再登場し、記録更新をしてくれるでしょう!

[OPTION 1985年8月号より]

(Play Back The OPTION by永光やすの)

この記事の著者

永光やすの 近影

永光やすの

「ジェミニZZ/Rに乗る女」としてOPTION誌取材を受けたのをきっかけに、1987年より10年ほど編集部に在籍、Dai稲田の世話役となる。1992年式BNR32 GT-Rを購入後、「OPT女帝やすのGT-R日記」と題しステップアップ~ゴマメも含めレポート。
Rのローン終了後、フリーライターに転向。AMKREAD DRAGオフィシャルレポートや、頭文字D・湾岸MidNight・ナニワトモアレ等、講談社系車漫画のガイドブックを執筆。clicccarでは1981年から続くOPTION誌バックナンバーを紹介する「PlayBack the OPTION」、清水和夫・大井貴之・井出有治さんのアシスト等を担当。
続きを見る
閉じる