トヨタはル・マン24時間レースでいかに戦い「改善」を手に入れ「見えない敵」に勝利したか?

他社を寄せ付けない圧倒的な強さを見せつけた

運命の決勝日である16日。やや薄曇りながら太陽も顔を出し、気温21度、路面温度29度というコンディションの中、現地時間15時、日本時間22時に決勝レースの火蓋が落とされました。

7号車と8号車は幾度となく順位を入れ替えながら3位以下にトップを譲ることなく走行。完走すればいいという守りではなく、常に攻め続けたのです。

レース終盤の残り1時間40分頃、小林可夢偉がドライブする7号車が突然のスローダウン。時速80km/hでル・マンの名物「ユノディエール」を走行する姿に、誰もが2年前の悪夢を思い起こしたことでしょう。しかし、給油後再び鮮烈に復帰。燃料が足りなくなる恐れがあったため、一時的にスロー走行を行ったとのことで、トヨタは万が一のトラブルに備えてのシュミレーションを実施していたため、事なきを得ました。

そしてスタートして24時間後の17日の現地時間15時。2台のTS050ハイブリッドはチェッカーフラッグを受けます。

サルト・サーキットに集まった256,900人のモータースポーツファンの皆様の前で、TOYOTA GAZOO Racingは完璧な勝利を飾ったのです。

トヨタは30年以上に渡り延べ47台のレース車両をル・マンに送り込み参戦。6度の表彰台を獲得するも、ポディウムの頂点に立つことはできませんでした。 通算20回目の挑戦となる今大会で、トヨタは日本メーカーとして2社目となるル・マン24時間レース総合優勝を達成。またル・マン史上初となる「日本人ドライバーと日本の自動車メーカーによる総合優勝」という偉業も成し遂げました。

さらに、世界3大レース制覇に挑むフェルナンド・アロンソにとっても、初のル・マン参戦にして初優勝。「トリプルクラウン」達成に大きく前進するものとなりました。

優勝後、豊田章男 トヨタ自動車株式会社 代表取締役社長は「思いっきり走ってくれて、ありがとう!」と、昨年の敗戦後の弁「思いっきり走らせてあげられなくてゴメン…。」の反語ともいえるコメントを披露。そして「チームが、考え、辿り着いたのがトヨタが大切にし続けている「改善」という考え方です。」「クルマをつくるひとつひとつの作業…走らせる為のひとつひとつのオペレーション…それに向かう一人一人がどうしたらミスが起きないかを考え、それを徹底する。そうするとまた次にやるべきことが見つかっていく。欠けていた「強さ」を身につけようと1年間ひたすらに改善を繰り返し、積み重ねてきました。」と「改善」が今回のキーワードであったことを披露しました。

改善を武器に見えない敵と戦った今年のトヨタのル・マン24時間レース。WECの次戦となる第3戦シルバーストーン6時間レースは、9週間後の8月17日から19日にかけて行われます。そして、10月12日から14日、富士スピードウェイで富士6時間レースが開催されます。