ところで、冒頭に書いた「燃費は速さをカバーする」というのは一体どういうことなのでしょうか。
スーパー耐久に限らず耐久レースには給油がつきものです。給油のためにピットインを行うと概ね1分30秒から2分のタイムロスとなります。特にアクセラディーゼルが走るST-2クラスでは2分程度で富士を周回しますので1周分のタイムとなります。
朝6時、つまりレース開始から15時間を経てのピット回数は、その時ST-2クラストップだった新菱オート☆DIXCELエボⅩと3位だったGLocal☆新菱オートDXL エボXが15回、そしてアクセラディーゼルのDXLアラゴスタNOPROアクセラSKY-Dが11回となり、ピットストップで単純に4回の差がついているのです。
これだけで4周分のアドバンテージとなります。この割合で見ていけば24時間で6回から7回のピットストップの差が生まれます。
また、ライバルはトランクに燃料タンクを取り付けることができるので100リットル程度の大型なものが付きますが、アクセラディーゼルはタンクの取り付けスペースが大きくないので燃料タンクも小さくなります。そのため給油時間そのものはライバルに比べて短くなります。
そして4WDに対して軽いFF駆動のマシンなのでタイヤ交換も常に四輪交換する必要はなく、ピットイン2回から3回に1回だけ。その他はフロント二輪交換で済んでしまうので、給油時間も含めてのピット滞在時間は総じて短くなります。
また、燃費とは別に、この2台のマツダ ディーゼルは一切のペナルティーを受けていません。特にデミオディーゼルのDXLワコーズNOPROデミオSKY-Dは参加するST-5クラスで唯一のノーペナルティ。ペナルティーを受けてしまえば最低でもドライブスルー、最悪なら失格もありえます。そういった無駄を無くすこともレースには必要なことなのです。
走行のラップタイムで削る1秒とピット作業で削る1秒。そしてペナルティーで増やさない1秒。この全ての1秒の積み重ねが耐久レースの結果となっていくのです。
その1秒の積み重ねが24時間分集まってマツダ ディーゼル2台によるダブル表彰台が実現。速さだけではない、知恵と作戦、スタッフとドライバーの努力が実を結んだダブル表彰台となったのです。
燃費は速度をカバーする。これからの耐久レースに必要な要素と言えるでしょう。
速いライバルに作戦で勝って参加ドライバー9名全てが表彰台に登る。2台のマツダ ディーゼルが見せた24時間レースでの表彰台は大きな意義のあるものではないでしょうか。
ピレリスーパー耐久シリーズ2018 の次戦は7月14~15日の大分県オートポリスで開催される「スーパー耐久レースinオートポリス」。5時間のレース時間は24時間に比べれば短く感じるかもしれませんが、やはりロングな耐久レースには変わりありません。24時間とはまた違ったドラマが生まれてくることでしょう。
(写真・文:松永和浩)