クルマの中には多くのスプリングが使われています。そして、伸び縮みすることが求められるスプリングは、その素材が持つ「弾性」という変形しても元に戻る性質を利用したものです。そのため、どうしても鋼(スチール)が素材として使われることがほとんど。クルマでいえば、サスペンションに使われるスプリングが大きいもので、その重量はバネ定数に応じて重くなります。
つまり重いボディのクルマになるほど、それを支えるスプリングも重くなる傾向にあるわけです。大きなバッテリーを搭載するハイブリッドカーや電気自動車は、その燃費(電費)を稼ぐのに軽量に仕上げることが求められますが、重量増によりサスペンションは重くなってしまう宿命にあるのです。
フットワーク系パーツでいえば、サスペンションアームのアルミ化はかなり昔から進められていますし、ブレーキキャリパーもアルミで置換されています。そして超高級車に限った話になりますが、ブレーキローター(ディスク)は軽量かつ熱に強いカーボンを使うこともあります。
一方でスプリングは旧態依然としたスチールで作るしかなく、なかなか軽量化の方法が生まれてきませんでした。なかには、プラットフォームの設計から見直すことで樹脂製のリーフスプリング(板バネ)を採用するクルマもありますが、多くの乗用車で多く使われているコイルスプリングにおける材料置換は、非常にハードルが高いものでした。
しかし、日本の大手スプリングメーカー NHKニッパツ(日本発条株式会社)が、メジャーな軽量素材であるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)でコイルスプリングを製造することに成功したのです。「人とくるまのテクノロジー展2018横浜」に展示された試作品を実際に手にとってみましたが、さすがCFRPだけあって驚くほど軽量です。実際、従来からのスチール製スプリングと比べると45%の重さと、半分以下になっています。
コスト面などからすぐさま量産車に採用できる技術ではないにしても、ショーケースの中ではなく実際に手に取れる状態での展示レベルまで来ているということは、その未来に期待が高まります。
リサイクル性に問題を抱えていると指摘されることもあるCFRPですが、軽量化トレンドにあわせた需要の高まりに対応すべく、熱処理などリサイクルの手法も開発が進んでいます。クルマから金属が消え、すべてCFRPをはじめとする樹脂で作られる日は来るのでしょうか。
(山本晋也)