朝日新聞は宮内庁で所有している1991年式ロールスロイスのコーニッシュIII(スリー)について「修理出来ず頭を悩ませている」というニュースを流した。クルマの知識を全く持たない人なら信じるかもしれないけれど、ロールスロイスといえば「壊れない」ことを伝統としてきた由緒あるメーカーである。
真っ先に意見を聞いてみたのはロールスロイスを専門に扱っている『シーザートレーディング』の宮本代表。「この件でいろいろな人から連絡を受けています。結論から書くと、1990年と1991年のコーニッシュは生産台数が多く、部品もロールスロイスの中で最も豊富に出回っています」。
日本に無くても、アメリカやイギリスに問いあわせれば必ずあるとのこと。また、シーザートレーディングで販売するロールスロイスの整備を受けているのは、かつて今回話題になっているコーニッシュそのものを手がけた人だという。「直せないということは100%無いと断言出来ます」(宮本代表)。
続いてロールスロイスの広報担当者にも聞いてみた。「現在のロールスロイスは2003年に設立されたBMW傘下の企業です。それ以前に生産された車両の修理などについて責任を負うことが出来ないことになっています。現在はベントレーが窓口になります」(現在ベントレーはVW傘下)。
以下、いろんなルートから調べてみたけれど、そもそもロールスロイスは顧客第一主義のため、全て個々の対応になっているという。特に今回問題になっているコーニッシュの場合、ユーザーが日本のロイヤルファミリーということで特殊。ただ「修理出来ない」などあり得ないことは皆さん口を揃える。
一方、大雑把な状況が何となく解ってきた。まとめると、2007年に宮内庁の車馬課はコーニッシュのオイルとガソリンの滲みを発見。コーンズから見積もりを取ったそうだ。その際、コーンズとしては常識的な金額を提示したところ宮内庁側が「少し高い」と判断。このあたり、宮内庁にも金銭感覚ある?
確かに車馬課所有の日本車と整備金額もずいぶん違っていたことだろう。そこで当面動かす予定も無いため車検を切った”らしい”。つまり「部品が無い」とか「整備できない」という理由でなく、単なる予算削減のためだったようだ。妥当な金額さえあれば、すぐ使える状態になる。
朝日新聞がどういった方向に持って行きたかったかは不明。「4000万円も出して2回しか使わずスクラップになりそう」という問題提起なのか、はたまた「違う車両を購入したいための下地作り」なのか理解出来ない。いずれにしろ修理出来ることはロールスロイスの詳しい皆さんが断言している。
前出の宮本代表のところには「修理代金くらい有志で集める。何とか出来ないのか」という声も届いているという。宮内庁のコーニッシュ、新しい天皇陛下のパレードに使うとか使わない関係無く、せっかく持っている車両なのだから稼働出来る状態にしたらいいと思う。
(国沢光宏)