谷田部テストでは不発に終わる
この怪物クラウン・ワゴンの最高速チェックのため谷田部の周回路に持ち込み、フルスロットルをくれてみた。1速、2速の加速はスポーツカー並みのハイギヤードながら、素晴らしい。一切、軽量化されていない1500kgのボディをいとも簡単に150km/h台に乗せる怪力は、さすがにツインターボだけのことはある。
テストでは耐久性を考慮して、ブーストを最大1.3kg/cm2に調整してあったが、それでも4速6000rpmまでは短時間に到達した。しかし、空気抵抗増大のためか、車速ののびが次第に落ちてくる。
4速7000rpmまで引っ張って5速に入れるが、次第にブースとが低下、0.5kg/cm2ほどになってしまう。ガソリンは相当濃く、全開で谷田部のバンクを駆け降りても、黒煙をマフラーから吹くほどだ。
結局、5速でブーストの上がらぬまま計測地点を通過、最高速は201.96km/hに終わってしまった。
3周ほど周回したが、ブーストは上がらず、エンジンがヒートしてきたのでピットに入る。点検してみると、大型インタークーラーの吸気側カバーが大きく裂けて破損しており、ブーストがほとんど漏れていたことが分かった。
残念ながらここでタイムアウト、240km/h近いはずの最高速を実証することは出来なかった。
バンクでの高速安定性は意外に良好、ステアリングがフロントのリフトでやや軽くなるものの、直進性は常に保たれていた。空気抵抗は思ったよりも大きくない。実はバンボディはセダンよりもCD値、CL値ともかなり低く、このクルマのフィーリングもそれを裏付けている。
今回はトラブルに見舞われ、その実力の片鱗を見せたに終わったが、その怪物性は印象的だった。
・・・・・・・・・・・・・・
大川さん曰く「ワゴンじゃなくライトバンね!」と今でもおっしゃっていますが、その昔(クラウンよりはあと)、ベンツの300TEに500Eエンジンを換装して、通勤兼ラジコン荷物運搬用の「ライトバン」として乗っていた時期がありました。「ライトバンを舐めてかかると撃沈する」……いかにも大川さんらしいクルマの遊び方です!
[OPTION 1982年9月号より]
(Play Back The OPTION by 永光やすの)